処理水放出1か月 新たな輸出先の開拓や国内消費の拡大が課題に

東京, 9月24日, /AJMEDIA/

東京電力福島第一原発にたまる処理水の海への放出が始まってから、24日で1か月です。中国が強く反発し、日本産の水産物の輸入を全面的に停止したことで水産業に影響が広がっていて、新たな輸出先の開拓や国内消費の拡大が課題となっています。

福島第一原発にたまる処理水を薄めた上で、海に放出することに対しては、反発する中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止し、香港やマカオも福島や東京など10都県の水産物の輸入を禁止しています。

最大の輸出先の中国は放出前から水産物の検査を強化し、ことし7月の中国向けの水産物の輸出額は、前の年の同じ月を23%余り下回って2年半ぶりに減少に転じました。

中国による輸入停止などで8月以降もさらなる減少が見込まれています。

政府は水産事業者を支援するため、すでにある800億円の基金とは別に緊急対策として207億円の支出を決め、中国に依存するホタテなどの輸出先の転換に向けて、人材の確保や加工設備の導入費用などを補助することにしています。

また、経済団体や流通業界などには、日本の水産物の販売促進などの働きかけを続けることにしています。

水産業者の間では、中国の輸入停止に伴い取り引き価格の下落などの影響が出ているという声も上がっています。

風評被害への懸念も根強い中、科学的なデータにもとづいた正確な情報を国内外に発信し、新たな輸出先の開拓や国内消費の拡大をどのように進めるかが課題となっています。

豊洲市場 水産物の仲卸会社 売り上げ大幅減少
処理水の放出を受けて、中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止した影響などで、東京の豊洲市場にある水産物の仲卸会社は、売り上げが大幅に減少しています。

東京 江東区の豊洲市場から、20余りの国や地域に高級魚のノドグロやキンメダイなどを輸出している仲卸会社では香港向けの輸出がおよそ半分を占め、一部は中国本土にも流通していました。

しかし、中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止し、香港やマカオも福島や東京を含む10都県からの水産物の輸入を禁止した影響などで、1か月当たりの売り上げは以前と比べて、数千万円減少しているということです。

また、禁輸の対象外の水産物を香港などに輸出しようとしても、税関の検査に時間がかかるようになったため、朝、水揚げされた鮮魚をその日の夜までに届けることで、高い利幅が得られた取り引きもできなくなったということです。

会社は中東などへの販路の開拓や国内販売の強化を検討していますが、新しい取引先を見つけるのは簡単ではない上、主力商品となっている高級魚の需要は日本国内では限られ、売り上げ回復のめどは立っていません。

仲卸会社「山治」の山崎康弘社長は「中国や香港などに向けて、20年かけて日本のおいしい魚を納得してもらいながら売り込んできました。新しい輸出先をすぐに見つけるというのは簡単なことではなく、大変な思いをしています。政治家が本気になって、中国や香港などに見直しを求めてほしい」と話しています。

回転ずし大手 国産ホタテのすしを販売するキャンペーン開始
中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止したことなどを受けて、回転ずしチェーン大手は水産業の支援に向けて、国内での消費を後押ししようと、国産ホタテのすしを全国で販売するキャンペーンを始めました。

回転ずしチェーン大手の「くら寿司」は、22日から全国にある540店舗すべてで、北海道などで捕れた国産ホタテのすしを販売するキャンペーンを始めました。

ふだんよりも倍の大きさのホタテを使っているということで、中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止する中、会社では特に大きな影響を受けているホタテの消費を促していきたいとしています。

都内の店舗でホタテのすしを食べた70代の男性は「報道で国産のホタテが大変な状況だと知り、支援になればと思って食べました。少しでもやれることをするのが大事だと思います」と話していました。
「くら寿司」広報部の小坂博之マネージャーは「処理水の放出の影響が出ている中、国産の水産物を取り扱うことで少しでも漁業者の支援につながればと思っている。今後はほかの魚でもこうした取り組みを続けたい」と話しています。

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