東京, 6月14日, /AJMEDIA/
政府が13日に取りまとめたこども未来戦略方針では、児童手当について(1)支給期間を高校生まで延長(2)所得制限を撤廃(3)第3子以降への加算を倍増―とする拡充を決めた。岸田文雄首相は来年10月分からの実施を明言。3人の子どもがいる家庭では、手当総額は最大で約400万円増の1100万円になるとの試算を示した。
少子化反転、不透明に 安定財源確保も課題―こども未来戦略方針
こうした中、支給期間の延長に伴い、税制面で高校生の扶養控除を見直す案が浮上。手当が増えても税の負担増が上回る家庭もありそうだ。
扶養控除は、16~18歳の子どもを扶養する場合、1人につき38万円を所得額から控除する仕組み。以前は0~15歳にも年少扶養控除があったが、民主党政権時代に子ども手当(現児童手当)の所得制限を撤廃した際、財源捻出のため廃止された。政権交代後の2012年度に所得制限は復活したが、年少扶養控除は廃止されたままだ。
このまま児童手当を拡充すれば高校生への支援だけが手厚くなるとして、こども未来戦略方針では「中学生までの取り扱いとのバランスを踏まえ、高校生の扶養控除との関係をどう考えるか整理する」と脚注に記載した。明記はしていないが、暗に廃止の可能性も示唆する書きぶりだ。
鈴木俊一財務相は扶養控除見直しについて「歳出と税制の在り方を考える中で必要だ」と前向きな考えを示す一方、「少子化対策の財源確保を目的に検討すべきことではない」とも発言。手当と控除の二重支援とならないよう制度を整えるのが目的としている。
大和総研の是枝俊悟主任研究員は、扶養控除は所得が多く税率が高い人ほど減税効果が大きいと指摘。「控除をなくして手当に一本化するのは良い方向だ」と評価する。
とはいえ所得税や住民税の負担が増すのは事実。市民団体「子育て支援拡充を目指す会」の試算では世帯年収が800万円程度以上になると税負担増が児童手当を上回るという。条件次第では高校授業料無償化の対象から外れる家庭もあり、その場合さらに年間最大約28万円の出費が生じる。
同会は「控除廃止は子育て世帯を狙い撃ちする増税で、少子化対策に逆行する」と批判した。