東京, 3月20日, /AJMEDIA/
岸田文雄首相が今年初の外国訪問先にインドを選び、日印両国と米国、オーストラリアの4カ国による「クアッド」の枠組み強化に向け、モディ首相との信頼関係構築に努めた。中国の覇権主義的な動きに結束して対処していきたい考えだが、ウクライナに軍事侵攻したロシアへの姿勢には温度差も目立った。
日本にとってクアッドは対中戦略の中核の一つだ。インド太平洋地域で影響力を増す中国の存在は、日印双方にとって脅威となっている。外務省幹部は「インドをわれわれの陣営につなぎ留めることが大事だ」と訪印の意義を強調する。
両国首脳の相互訪問は、新型コロナウイルス感染拡大などの影響で、3年半近く途絶えていた。日印外交筋によると、インド側は5月にも日本で開催されるクアッド首脳会合に先立ち、岸田首相の訪印を強く要請。日本側もインド重視の姿勢を示すため、最優先で応じることを決めた。
一方、国際社会で最大の懸案となっているウクライナ情勢をめぐり、ロシアと伝統的な友好関係にあるインドは、制裁措置などで日米欧とは一線を画す。19日の日印首脳会談でも「力による一方的な現状変更はいかなる地域でも許してはならない」との立場を確認したものの、ロシアを名指しはしなかった。
会談後の共同記者発表でも、岸田首相はウクライナ危機に言及。「インドと連携し、戦闘の即時停止と対話による事態の打開に向けた働き掛けを進めたい」と述べたが、モディ首相はウクライナには触れなかった。日本政府関係者はかねて「インドがロシアとの関係を切れないのは分かっている」と、この問題で共同歩調を取ることの難しさを指摘していた。
ウクライナ情勢で十分な成果が見通せない中、首相が訪印を決断したことに、政府内からは「なぜ今インドなのか」(関係者)と疑問の声もあった。日米欧とインドの「溝」をかえって浮き彫りにしかねないからだ。
「ふに落ちないかもしれないが『それはそれ』だ。最大の脅威である中国に備える点はぶれてはいけない」。外務省幹部はこう理解を求めた。