東京, 8月27日, /AJMEDIA/
【ニアメーAFP時事】ロシアの民間軍事会社ワグネルは2014年以降、同国政府の「下請け」としてアフリカ諸国に進出してきた。創設者のプリゴジン氏が搭乗機墜落で死亡したと伝えられるが、ロシア政府はワグネルがアフリカで進めてきた活動を継続するだろうと、専門家は予想している。
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◇安保から資源まで
ワグネルはリビアや中央アフリカ、マリに戦闘員を派遣し、安全保障分野で軍などに協力。偽情報流布や政情不安定化キャンペーンに携わるとともに、アフリカの一部諸国では鉱物資源開発といった商業活動も担ってきた。
アフリカでの影響力拡大に向け、ロシアは現地の大使館のほか個人投資家、ロシア企業、テレビ、正教会なども駆使。そうした取り組みが、ワグネルの現地進出の推進力になったとされる。
米シンクタンク「大西洋評議会」アフリカ部長のラマ・ヤド氏はAFP通信に、ワグネルの有無にかかわらず「ロシアはアフリカで、ビジネスや安保に絡む権益維持を望んでいる。それが第一の目標だ」と説明。中央アフリカの野党政治家ジョゼフ・ベンドゥンガ氏は「ワグネルはロシアによる『新植民地主義』の手段だった。やめる理由はない」と断言する。
◇代役は困難か
とはいえ、ワグネルという込み入った組織を切り盛りするのは容易でない。米シンクタンク「ソウファン・センター」は「プリゴジン氏が取り仕切っていた複雑なシステムは、クレムリン(ロシア大統領府)すら真の意味では理解していないと、プーチン大統領自身が認めた」と指摘する。
フリーの研究者ジョン・レヒナー氏は「アフリカでワグネルの要員を交代させるには、活動を継続できるだけの人脈と経験のある人物を見つける必要があるが、それはなさそうだ」と分析。ワグネルが中央アフリカで、改憲の是非を問う国民投票を実現させるまでに影響力を強めたことを挙げ「(ワグネルの)重要人物をポストにとどめることは、十分あり得る」との見方を示した。
◇軍政の「保険」
それでも、プリゴジン氏の穴は簡単には埋まらない。調査報道を手掛けるロシアのジャーナリスト、デニス・コロトコフ氏は「適切な報酬を提示すれば大勢が手を挙げるだろうが、プリゴジン氏ほどの仕事は絶対にできない」とみる。
ワグネルの動向は、受け入れ国の重大な関心事でもある。米国やフランスは、ワグネルがマリ軍事政権などの体制を維持する一種の保険として機能していると批判。レヒナー氏は、その役割を担う民兵組織が他にない以上、西側との協力を望まないアフリカ諸国にとって「ワグネルはいまだ唯一の選択肢だ」と指摘した。