東京, 2月23日, /AJMEDIA/
「生きた化石」と呼ばれる魚、シーラカンスが群れをなしている様子をNHKの取材班が撮影し、繁殖につながる可能性のある行動を捉えることに成功しました。シーラカンスの繁殖行動はこれまで謎に包まれていて、専門家は生態に迫る貴重な映像だとしています。
シーラカンスは、およそ4億年前の魚の化石とほとんど変わらない姿をしていることから「生きた化石」と呼ばれ、いまもアフリカとインドネシアの近海で生息していることが確認されていますが、主に水深100メートルより深い海に生息し、個体数も少ないため、詳しい生態はほとんどわかっていません。
NHKの取材班は去年8月、インドネシアのスラウェシ島の沖合で、国内外の研究者による調査チームとともに潜水艇に乗り込み、高精細な8Kカメラで撮影を行いました。
調査では、水深およそ160メートル付近で1匹のシーラカンスを見つけ、3台の潜水艇でかわるがわる観察し続ける「72時間連続追跡」を行った結果、これまで単独で確認される例が多かったシーラカンスの8匹の群れを発見しました。
さらに、
▽群れの中の1匹が立ち泳ぎのような姿勢で白い腹を見せている様子
▽オスとみられる1匹がメスの腹の下に頭をすり寄せる様子
の撮影に成功し、調査チームによりますと、こうした行動は異性の関心をひく時に見せる行動と考えられるということです。
調査チームでは、シーラカンスの繁殖につながる可能性のある行動を捉えた貴重な映像だとしています。
シーラカンスの生態を20年以上研究し、今回の調査チームを指揮した、福島県いわき市にある水族館「アクアマリンふくしま」の岩田雅光飼育展示統括部長は「長時間撮影したことで、複数の個体が何かしらの関係性を持っていることが確認できた。映像をさらに解析することで、これまでわからなかったことの結論を導ける可能性がある。新たな疑問が生まれる可能性にもあふれた映像だ」と話しています。
シーラカンスとは
「アクアマリンふくしま」によりますと、シーラカンスは、4億年以上前に現れた魚で、およそ6600万年前の白亜紀の終わりに恐竜などと共に絶滅したと考えられていました。
しかし、今から87年前の1938年に南アフリカ沖で捕獲された魚が、専門家の調査の結果、絶滅したはずのシーラカンスだとわかり、世界を驚かせました。
また、1952年にはアフリカ大陸とマダガスカル島の間に位置するコモロ諸島で2匹目が捕獲され、その後、アフリカでは300匹ほどが捕獲されています。
さらに、1990年代後半には、インドネシア近海でも生息が確認され、これまでに10匹ほどが捕獲されていて、アフリカのシーラカンスとは別の種に分類されています。
現在、生息が確認されているのは、アフリカとインドネシアの2つの種のみで、主に水深100メートルより深い海に生息し、その詳しい生態はほとんどわかっていません。
個体数が少なく、IUCN=国際自然保護連合のレッドリストで絶滅危惧種に指定されていて、「ワシントン条約」では国際的な商業取引が禁止されています。
海外の研究者「驚くべき映像」
先月、都内で開かれたシーラカンスに関する国際シンポジウムでは、今回撮影された映像の一部が紹介されました。
シーラカンスの化石を調べる第一線の研究者で、フランス国立自然史博物館のガエル・クレマー教授は、「シーラカンスが互いに関係性を持っていることが明らかな驚くべき映像だ」と話していました。
また、北九州市立自然史・歴史博物館の薮本美孝名誉館員は「映像をより解析することで、シーラカンスの産卵行動や社会構造なども見えてくる可能性がある。自らの研究にもつなげたい」と話していました。