東京, 11月08日, /AJMEDIA/
パレスチナのガザ地区で地上侵攻を進めるイスラエルのガラント国防相は7日、地上部隊がガザ市の中心部に達したことを明らかにしました。ガザ地区の当局はガザ市をはじめ北部には依然として90万の人たちがとどまっていると主張し、攻撃を続けるイスラエル側を非難しています。
※11月8日(日本時間)のイスラエルやパレスチナに関する動きを随時更新でお伝えします。
《外交の動き》
米メディア「バイデン大統領が3日間の戦闘停止を要請」
アメリカのニュースサイト、アクシオスは7日、アメリカとイスラエルの当局者の話として、アメリカのバイデン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と前日に行った電話会談の中で、イスラム組織ハマスに捕らえられた人質の解放を進めるため、3日間の戦闘停止に同意するよう要請したと伝えました。
提案はアメリカやイスラエル、それに人質解放を巡ってハマスとの仲介役を務めるカタールの間で話し合われていたものだということでイスラエルが3日間、戦闘を停止すればハマス側が
▽10人から15人の人質を解放するとともに、
▽3日間のうちに人質全員の名前を特定し、名簿にして出すという内容だということです。
これに対してネタニヤフ首相は、ハマスを信用しておらず、要請に応じるときではないとして否定的な考えを示したということです。ネタニヤフ首相は戦闘を3日間停止すれば、イスラエルの軍事行動に対する国際社会からの支援も失いかねないとバイデン大統領に伝えたとしています。
米 戦略広報調整官「イスラエル軍のガザ地区占領を支持しない」
イスラエルのネタニヤフ首相は6日、アメリカのABCテレビのインタビューで、戦闘終結後のガザ地区について「イスラエルは無期限で、安全保障全般の責任を担うことになる」と述べ、詳しいことは明らかにしなかったものの関与を続ける考えを示しました。
これについてホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は、戦闘終結後のガザ地区の統治などをめぐってイスラエル側と活発に議論しているとした上で「ネタニヤフ首相の発言の内容や『無期限』の意味については首相自身に語ってもらえればと思う」と述べるにとどめました。ただ「われわれはイスラエル軍によるガザ地区の占領を支持しない」と述べました。
バイデン大統領は、これまでガザ地区を実効支配するハマスの排除を支持する一方、イスラエル軍が1967年の第3次中東戦争の時と同じように、ガザ地区を再び占領することについては反対する姿勢を示していて、今回、アメリカの立場を改めて強調した形です。
松野官房長官「中東情勢 G7の一致した立場示したい」
松野官房長官は8日午前の記者会見で「イスラエルはテロ攻撃に対し、他の主権国家と同様に自国と自国民を守る権利を有すると認識しているが、すべての行動は国際人道法を含む国際法に従って行われるべきだ。イスラエルに対しても一般市民の保護の重要性を伝達し、国際法に従った対応などを要請している」と述べました。
その上で「現在調整中のG7外相声明の中で、中東情勢に関してG7の一致した立場を示せるようにしたい。引き続き、刻一刻と動く現地情勢を踏まえ、G7を含む各国や国際機関との間で意思疎通を行い、事態の早期沈静化や人道状況の改善などに向けた外交努力を粘り強く続けていきたい」と述べました。
《戦闘の動き》
ガザ地区保健当局 地区の死者が1万328人と発表 約4割は子ども
ガザ地区の保健当局は7日、ガザ地区の死者が1万328人に上ったと発表し、このうちおよそ4割にあたる4237人が子どもだということです。
また、がれきの下敷きになるなどして1350人の子どもを含む2450人の行方がわからなくなっているとしています。
医療物資を運んでいた車列が攻撃を受け損傷
ガザ地区でイスラエル軍が地上侵攻を進める中、医療活動を行うパレスチナ赤新月社は7日「ガザ地区で医療物資を運んでいた車列が攻撃を受けた」と旧ツイッターの「X」に投稿しました。
投稿によりますと、トラック5台からなる車列がガザ市北部にあるクッズ病院などの施設に医療物資を運んでいたところ攻撃を受け、トラック2台が損傷し、運転手1人が軽いけがをしたということです。
パレスチナ赤新月社は「ガザ地区やその北部地域に重要な支援と必要不可欠な物資が速やかに届くよう要請する」としています。
米 戦略広報調整官「イスラエル軍 地上侵攻は小さな部隊」
アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は7日、記者会見でイスラエル軍のガザ地区への地上侵攻について「ハマスの幹部に圧力をかけながら、捜し出すために地上戦に踏み切っている」と述べました。
そして「イスラエル軍はガザの北部で大規模な布陣を敷くと思われていたが多くの人が考えていたよりも小さな部隊で入っている。地上にいることで部隊のリスクは高まるが、上空からよりもより慎重に陣形を整え、標的を絞れるようになる」と述べて、小規模な部隊で地上侵攻することによって、民間人の犠牲者を抑えようとしているとの見方を示しました。
イスラエル軍 複数の地下トンネルを破壊したと投稿
イスラエル軍は、ガザ地区北部のベイトハヌーンで住宅地に設置された複数の地下トンネルを発見し破壊したと、7日、SNSに投稿しました。
地下トンネルの破壊は6日に行われたとしていて、公開された動画では外壁が大きく壊れた建物が写し出されたあと、コンクリートのようなもので壁が固められた地下に続くとみられる空間が見え、兵士が銃を向けたり、ライトで照らしたりしています。
そして別のシーンでは、大きな爆発音とともに、煙が高く上がる様子も確認できます。
トンネルの発見や破壊には特殊部隊「ヤハロム」に所属する兵士も参加したとしていて、ヤハロムの司令官は動画で、「ハマスの攻撃ルートは住宅地や住宅の居間も通っていた。作戦を続け、ハマスの地上と地下の施設をすべて破壊する」と述べています。
《避難の動き》
ガザ地区当局 ”北部に依然90万人”
ガザ地区の当局は、北部に依然として90万人がとどまっているほか、人道支援物資がおよそ1か月にわたり届いていないと主張しました。
そのうえでガザ地区北部では燃料と小麦粉の不足からパン屋がすべて操業を停止し安全ではない水を飲まざるを得ない状況だとして「イスラエルは激しい空爆で住民に心理的な圧力を加え住民を家から追い出そうとしている。封鎖されたなかで南部がこれだけの人口を受け入れるのは無理だ」とイスラエル側を非難しました。
イスラエル軍 報道官 白旗掲げ避難する住民の動画を投稿
イスラエル軍のアラビア語の報道官は7日、旧ツイッターのXにガザ地区北部の住民に南部に退避するよう呼びかける文章を投稿しました。
7日の午前10時から午後2時の間、ガザ地区を南北に縦断するサラハディン通りの通行を再び許可するとして、安全のために南部に移動するよう求めています。
投稿には大勢の住民が白旗を掲げたり、両手をあげたりするなどして歩いている姿を遠くから捉えた動画が添えられていて「多くの人がこの時間、退避を行っている。あなたと、あなたが愛する人が大切なら我々の指示に従って南に向かおう」と呼びかけています。
イスラエル軍はガザ地区の最大都市で北部にあるガザ市を地上部隊で包囲し、激しい攻撃を昼夜問わず行っていて、さらに市街戦を強化する前に民間人の退避を促すことで、国際法を順守しているとして軍事作戦の正当性を強調する狙いがあるものとみられます。
ガザ市の病院に今も数千人が避難
イスラエル軍が最大都市のガザ市を包囲しながら攻勢を強める中、ガザ市にある地区最大級の医療機関、シファ病院には、今も数千人が避難していると伝えられています。
7日に撮影された映像では、シファ病院の周辺の路上を小さな子どもからお年寄りまで多くの人が行き交っているほか病院の敷地内にはテントが並んでいて、男性たちが休んだりしている様子がうつっています。
また病院の中には女性や子どもを中心に多くの人が避難していて、廊下に所狭しとふとんが敷かれ、座り込んだり横になったりしている人の姿が見られます。なかにはミルクを飲む赤ちゃんの姿もあります。
娘を失ったという女性は「私たちの状況を見てください。食べ物も、電気も、水もありません。毛布もない中廊下で寝ていてとても寒いです」と窮状を訴えていました。
すべての子どもが犠牲になったという女性は「私たちは最も愛する人たちを失いました。これは大量虐殺です。私は別れを伝えることも慰めることもできないまま子どもたちを失いました」と憤りをあらわにしていました。そして「攻撃は私たちを狙っています。病院にも難民キャンプにも家の中にも路上にも、安全な場所はありません」とイスラエル軍の攻撃によって住民の犠牲が広がっていると訴えました。
このシファ病院の近くでは今月に入って救急車の車列がミサイル攻撃を受けて15人が死亡しています。
ガザ地区 冬用の衣服が足りなくなる懸念
ガザ地区では多くの人が着の身着のまま北部から南部に避難していて、現地では気温が下がる冬に向けて、冬用の衣服が足りなくなる懸念が出ています。
多くの人が避難しているガザ地区南部のラファでNHKガザ事務所のスタッフが6日に撮影した映像では、北部から避難してきた人たちが、通りに設けられた古着を売る店で長袖や防寒着などを買い求めている様子が映っています。
店を訪れていた男性は「北部のベイトハヌーンからラファ市内の学校に避難しています。何も持たずに避難してきたので冬服を買いに来ました。子どもも服がないので冬が来るのが心配です」と不安そうな様子で話していました。
別の女性は「子どもたちの服を買いに来ました。子どもたちはおなかの調子が悪いし、寒さにも苦しんでいます」と訴えていました。
南部にある避難所は、スペースが足りず、学校の校庭など屋外で寝泊まりしながら避難生活を送っている人も多くいて、現地では、冬に向けて寒さへの懸念が出ています。
ガザ地区アーティスト「破壊と殺りく止めるため手を差し伸べて」
イスラエル軍による地上侵攻が続くなか、日本に招かれた経験もあるガザ地区のアーティストが、避難生活のなかNHKの電話取材に応じました。
ハワジリさんはイスラエル軍が南部への退避を呼びかける中、ガザ地区の北部にあった自宅からガザ地区を南北を分けるワディ・ガザのすぐ南側の町に避難しました。そこにもイスラエル軍が迫ってきたため、さらに南への退避も考えたということですが、現状は困難だと言います。
ハワジリさんは「高齢者と子ども、それに女性を含む、総勢25人で行動していて、受け入れてくれる場所がない。ほかに行く場所も、とりうる選択肢はない」と話していました。
またハワジリさんは太陽光パネルでスマートフォンを充電しながら、通信手段を確保しているということですが、かつて一緒に来日したアーティスト仲間とも連絡が取れないと身を案じていました。
ハワジリさんは「ガザ地区で起きていることを知ってもらい、破壊と殺りくを止めるために手を差し伸べてほしい」と訴えていましたが、音声は途切れ途切れで、通話も10分ほどで切れてしまいました。
ロンドンで人質の解放を求めるデモ「彼らを家に帰して」
パレスチナのイスラム組織ハマスが奇襲攻撃を行ってから7日で1か月となるなか、ロンドンの首相官邸前には7日、人質の顔写真のポスターやイスラエル国旗を持った人などおよそ300人が集まって「彼らを家に帰して」などと声を上げました。
攻撃の直後にハマスに人質に取られたものの先月23日に解放された85歳のイスラエル人の娘のシャロン・リフシッツさんもデモに参加しました。
リフシッツさんによりますと、解放された母親は日に日に健康を取り戻しているものの、83歳の父親はまだガザ地区で拘束されていて、母親によると腕を撃たれてけがをしていて、一度も連絡が取れていないとしています。
リフシッツさんは「私たちは復讐なんて望んでいない。ガザ地区の子供たちが死んだと聞いて気持ちが晴れるわけではなく、喪失感があり、とても悲しい。この状況を解決し、ともに平和に生きる道を見つける必要がある。まずは人質を返して欲しい」と涙ながらに訴えました。
イスラエル市民 人質の一刻も早い解放を訴える
パレスチナのイスラム組織ハマスが奇襲攻撃を行ってから7日で1か月となるなか、イスラエル最大の商業都市テルアビブの広場には大勢の人が集まり、犠牲者に黙とうをささげたり、イスラエルの国歌を歌ったりする姿がみられました。
また広場にはガザ地区で拘束されている人質の人たちの顔写真のポスターや、人質の数を表した240体のぬいぐるみも並べられ、一刻も早い解放を訴えていました。