東京, 10月7日, /AJMEDIA/
中国のファーウェイ・テクノロジーズ(ファーウェイ)は10月2日に新製品発表会を実施し、スマートウォッチの新機種「HUAWEI WATCH GT5」「HUAWEI WATCH GT5 Pro」などを発表した。
かつて日本のスマートフォン市場でも大きな存在感を誇ったファーウェイだが、米国による制裁で中国外でのスマートフォンの開発や販売に大きな制約が生じている。一方のスマートウォッチ市場ではどのような戦略をもって挑んでいるのだろうか。
「HUAWEI」ブランドで知られる中国のファーウェイといえば、日本ではここ最近、スマートウォッチやワイヤレスイヤホンなどのウェアラブル製品で知られるメーカーだ。いずれの製品もラインアップの幅広さや、コストパフォーマンスの高さなどで人気を博しており、市場で一定のシェアを獲得しているようだ。
新製品の投入にも積極的な同社は、10月2日の新製品発表会で新しいスマートウォッチの主力製品となるHUAWEI WATCH GT5、HUAWEI WATCH GT5 Proと、ハイエンドモデルの「HUAWEI WATCH Ultimate」の新色を発表している。
だがファーウェイといえば、少し前まではスマートフォンメーカーというイメージが強く、現在もそうしたイメージを持つ人が多いことだろう。確かに2019年までは日本でスマートフォンの新製品を積極的に投入しており、一時はNTTドコモやKDDI、ソフトバンクといった携帯大手にも製品を提供していた実績がある。
それに加えて最近では、中国で3つ折りスマートフォン「HUAWEI Mate XT Ultimate Design」の発表会を、米アップルの新製品「iPhone 16」シリーズの発表にぶつける形で実施。お膝元の中国ではスマートフォンメーカーとして現在も大きな存在感を発揮している様子がうかがえる。
米国の制裁で一時はスマートフォンの製造も困難に
にも関わらず、なぜ同社が日本をはじめとした中国外であまりスマートフォンを出していないのかといえば、ひとえに米国による制裁の影響が大きい。同社は一時出荷台数の世界シェアでトップに躍り出るなど、スマートフォン市場で急成長を遂げていたのだが、2018年頃から加熱した米中による貿易摩擦で、同社を巡っても米中が激しく対立。その結果として2019年に米国商務省が同社をエンティティリストに追加し、米国企業との取引が大幅に制限されたのである。
そもそも、Android OSはオープンソースだが、Google Playなどを使うためのGoogleモバイルサービス(GMS)は制裁の対象となった。また、それを動作させるチップセットなどを開発、製造するのにも米国の技術が必要だ。ファーウェイは一連の制裁によって、一時はスマートフォンの開発そのものが困難となり、同社のスマートフォンブランドの1つだった「HONOR」(オナー)の事業を売却するなど経営的にも非常に厳しい状況が続いていた。
そこで、同社は戦略を大きく転換。OSを自社開発の「Harmony OS」に切り替えつつチップセットの製造などにも自国の技術を活用することで、制裁の影響を回避、中国市場を主体とし、スマートフォン事業を立て直すに至っている。
だが多くの人が知る通り、現在スマートフォンのエコシステムは世界的に見て、アップルの「iOS」またはグーグルの「Android」という、米国製OSの下に成り立っている。
ファーウェイもHarmony OSのエコシステム構築には力を入れているが、中国外でその開拓が進んでいるとは言い難い。そのため、同社は現在もスマートフォン事業で思うように中国外に出ていくことができていないのである。
スマホと違い「独自OS」でも戦えるウェアラブルに商機
だが同社は、中国では家電からEV(電気自動車)に至るまで非常に幅広い製品を手がけており、米国の制裁の影響を受けない製品も多く存在している。その1つとして現在中国外での市場開拓を推し進めているのが、スマートウォッチなどのウェアラブル製品だ。
スマートウォッチはアップルの「Apple Watch」や、「Pixel Watch」といったグーグルの「Wear OS by Google」を搭載したモデルが知られている。だが一方で、同市場ではファーウェイのほか、米ガーミンやフィンランドのポラール・エレクトロなど、独自OSを採用した複数のメーカーが一定のシェアを獲得しており、スマートフォンのような「2強体制」とはなっていない。
その理由は、スマートウォッチに求められるニーズに幅があるためだ。Apple WatchやPixel Watchなどは、確かにスマートフォンとの連携に優れ、モバイル通信や決済が利用できるなどの非常に豊富な機能を持つ。しかし、その分バッテリーが持つのが1、2日程度と非常に短い。
だが現在、スマートウォッチで最もニーズが高いのはスマートフォンのサポート的な機能ではなく、健康管理やフィットネス、スポーツの練習支援など身体に関する機能だ。そうした用途では確実な身体データの取得が求められ、そのためには24時間常に装着していることが求められる。1日程度でバッテリーが切れてしまうようでは使い勝手が非常に悪いのだ。