「犯行着衣」か「捏造」か 58年前の強盗殺人―袴田さん再審、26日判決・静岡地裁

東京, 9月23日 /AJMEDIA/

 静岡県で1966年6月、一家4人が殺害された強盗殺人事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)=釈放=の再審判決が26日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で言い渡される。公判では事件翌年に見つかった「5点の衣類」を巡り検察側と弁護側が全面対決。袴田さんの犯行着衣だとして死刑を求めた検察側に対し、弁護側は証拠の捏造(ねつぞう)を訴えている。

 昨年10月に始まった再審公判は、これまでに計15回開かれ、5点の衣類に残った血痕の「赤み」については、法医学者ら5人の証人尋問が行われた。

 5点の衣類は事件発生約1年2カ月後の67年8月に工場のみそタンクの中から見つかった。弁護側の再現実験で、1年以上みそ漬けにされた血痕に赤みは残らないとの結果が出たことが再審開始の決め手になっており、赤みが残るか否かは、判決を左右する最大の争点だ。

 検察側証人の神田芳郎・久留米大教授は血痕が赤く見えるかどうかは「観察者の主観」で、「科学的判断は難しい」と指摘。池田典昭・九州大名誉教授は、みそ漬けで赤みが消えるとする弁護側鑑定について「乾燥など、血痕の黒褐色化を阻害する要因が検討されていない」と批判し、「赤みが残る可能性はある」と証言した。

 一方、弁護側の3証人はいずれも「1年以上みそ漬けされた血痕に赤みが残ることはない」と反論した。

 弁護側鑑定で中心的役割を果たした旭川医科大の清水恵子教授は「血痕は酸化によって赤みが消える」とした上で、5点の衣類の繊維の間や衣類が納まっていた麻袋の中には「(酸化するのに)十分な酸素量があった」と証言。検察側の主張を「(赤みが残る)可能性があるという抽象的なもので、仮説の域を出ない」と批判した。

 袴田さんは5点の衣類が見つかる約1年前の66年8月に逮捕された。血痕に赤みが残らないのであれば、拘束されていた袴田さんがみそタンクに衣類を隠すことは不可能で、事件後、何者かが衣類をタンク内に隠し入れたことになる。

 再審公判は、無罪を言い渡すべき証拠が新たに発見された場合などに行われる。今回も無罪が言い渡される公算が大きいとされるが、地裁はどう判断するのか。判決が注目される。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts