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鶏卵の高騰招いた22年鳥インフル猛威…新対策が効果? 続発なく殺処分数も激減しているが、養鶏業者が「毎日びくびくしている」理由

東京, 01月06日, /AJMEDIA/

 鹿児島県出水市の養鶏場で2023年シーズン県内1例目の高病原性鳥インフルエンザが発生してから1カ月が過ぎた。初発から12例続発した22年季と異なり、2例目は確認されていない。全国的にも過去最多の84例、約1771万羽を殺処分した昨シーズンより発生、被害ともに格段に少ない。ただ、野鳥の感染は連日確認されており、関係者は気の抜けない日々を送る。
23年季は12月3日に発生した出水市の養鶏場が国内4例目だった。この時点で殺処分羽数は全国で約18万羽。その後も1カ月近く続発がなく、出水市でも、発生地点の周辺農場に設定された移動制限は年内に解除された。

 それでも、1年前の大被害を思うと関係者の気は休まらない。マルイ農協(同市)の椎木昭任生産事業部長は「移動制限がない状態で年を越せたという点では気持ちは多少マシだが、異変がないかみんな毎日びくびくしている」と明かす。

 22年季は10月下旬の初発から年内だけで22道県51例被害が発生し、殺処分羽数が800万羽を超えた。県内でも11月18日の1例目から約1カ月で出水市を中心に12例と相次ぎ、130万羽余りが被害を受けた。

 国の家きん疾病小委員会で委員長を務める鳥取大学の山口剛士教授=動物衛生学=は「全国の野鳥の発生状況を考えると今季もリスクは変わらない」と話す。野鳥の感染状況は環境中のウイルス量の目安となる。

 22年季は出水市のツルの感染例が多かったものの、近隣の養鶏で流行したウイルス株とは異なっていた。ツルを差し引いた12月下旬までの全国の野鳥感染は約90例。今季の約80例と大差ない。

 ツルの渡来地を調査している鹿児島大学の小澤真准教授=ウイルス学=も「ねぐらの水からもウイルスが検出されているので安心はできない」と指摘する。

 県内養鶏で被害が抑えられているのはなぜか。両専門家は「シーズンが終わらないと分析できない」と前置きしつつ、生産者の対策を一因に挙げる。

 マルイ農協は22年季の独自の調査をもとに、粉じんを介したウイルスの侵入防止へ、出水市近辺の農場で鶏舎の空気取り込み口へのフィルターや消毒液の細霧装置の設置を進めた。

 肉用鶏を生産する鹿児島サンフーズ(同市)も独自の防疫レベルを設けて対策を強化している。生産管理課の田下翔平課長は「今季は冬の割に暖かく、寒さが深まるこれからが怖い。気を抜かずに飼養衛生管理基準の順守を徹底する」。

 早期通報の意識も浸透してきた。今季1例目となった同市の養鶏場は、わずか3羽がかたまって死んでいるのを見て通報し、迅速な防疫措置につながった。

 鳥インフルのシーズンは春先まで続く。年が明けた1日には群馬、5日には岐阜で被害が出た。小澤准教授は「時期によって野鳥の集団構成は変わる。新たな野鳥が南下してくれば、違う株のウイルスを運んでくる可能性もある」と警鐘を鳴らす。

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