東京, 11月13日, /AJMEDIA/
20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が15~16日にインドネシアで、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が18~19日にタイで開かれる。ロシアが2月にウクライナ侵攻を開始して以降、初めて一堂に会する主要先進国と新興国の首脳は、戦後の国際秩序を揺るがす危機下で、食料不安やエネルギー価格高騰への対応などでどこまで協調できるのか。国際政治経済論が専門の古城佳子青山学院大教授と、国際法に詳しい荒木一郎横浜国立大教授に話を聞いた。
◇G20崩壊回避へ協調を=青山学院大の古城佳子教授
―国際協調体制がほころんでいる。
感染症を抑制しながら経済を浮上させていく難題で一致するのが困難だったところに、ロシアのウクライナ侵攻が始まり、対立の要素が増えた。各国の関係性は複雑で、G20やAPECの枠組みによる政策協調には悲観的な見通しを抱かざるを得ない。
―機能不全が続きかねない。
侵攻以降のG20閣僚会議では(全会一致の)合意を出せず、議論の場を提供するだけになっている。経済状況が非常に悪い中、G20が協力して前に進む姿勢を示さないと市場は不安定になる。多国間の協調から得られるメリットがないと思い始めると、枠組みは途端に崩れてしまう。
―G20やAPECの役割は。
首脳宣言が難しいとしても、議長総括で議論の成果や多国間の枠組みを重視している姿勢を示す試みは必要だ。何らかの形で協調が示せれば今の段階では良い。
―食料・エネルギー安全保障は喫緊の課題だ。
ウクライナの穀物輸送が滞り、(欧州が)天然ガスをロシアに依存していたことが露呈した。足元の問題でインパクトのある合意は難しい。先進7カ国(G7)の政治・経済状況が安定しない中、踏み込んだ支援でリーダーシップを取ろうとする国が見当たらない。
―日本は来年、G7議長国を務める。
G20サミットでは議長国インドネシアをサポートしながら、合意点を探る上で協調の枠組みが壊れないよう動くべきだ。G7内の結束だけでなく、G7メンバー以外にも働き掛け、日本を信頼する国を増やすのが良い。
◇信頼醸成へ議論重要=横浜国立大の荒木一郎教授
―一連の首脳会議に期待することは。
食料とエネルギーの安全保障、新型コロナウイルスワクチンの公平な配分などは、世界の最重要課題だ。世界的な危機に立ち向かい、信頼醸成へ主要国の首脳が集まって議論することは意味がある。ただ、ロシアのウクライナ侵攻が続く中、成果はあまり期待できない。
―首脳宣言の採択は難しそうだ。
合意できることについては最低限の文書を作るのが本来の姿だ。6月の世界貿易機関(WTO)閣僚会議は、閣僚宣言など約10本の文書をまとめた。政治的立場が異なってもWTOのように特定分野での合意は可能で、あらゆる国際組織が機能不全に陥っているとは思わない。ただ(G20とAPECの)首脳会議で同じようなことが言えるかというと厳しいだろう。
―機能不全の修復には何が必要か。
できるところから成果を出していくべきだ。G20とは違い、APECは有志国の連携を許す構造になっている。APECが目標に掲げるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想には、すべてのAPECメンバーが参加していない。(FTAAPへの道筋の一つである)環太平洋連携協定(TPP)も、シンガポールなどAPEC参加4カ国から始まり、参加国が拡大した。
―対ロ制裁で先進国と新興国は一枚岩ではない。
国際法的には、ウクライナ侵攻は正当化できない。制裁を実施する日米欧の立場は正しいが、新興国を理屈だけで説得することは難しい。エネルギーや食料を依存している国からすると(ロシアからの報復で)輸入価格が上がるのは困るだろう。