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企業も役所も大変!今どきの管理職研修に大きな盲点

東京, 3月13日, /AJMEDIA/

 企業も役所も、管理職の育成に悩んでおられます。振り返ってみると、私が初めて管理職になった40年前と比べ、管理職に求められることが大きく変わりました。職員を使って業務を達成するという管理職の任務は変わらず、そのための事務管理能力と職員管理能力が必要なことは変わりありません。(文 市町村職員中央研修所学長、元復興庁事務次官・岡本 全勝)
 ◆求められる革新
 しかし、企業にあっては右肩上がりの拡大が終わり、国にあっては先進国の政策を輸入し国内に広める、自治体にあっては国が示した政策を実行するという「仕事のかたち」が終わり、自ら考え解決しなければならなくなりました。
 この環境の変化が、管理者に必要な能力に革新を求めているのです。
 ところが、もう一つ、この管理能力とは別の変化があります。管理職に必要な知識と職務が大幅に増えたのです。
 個人情報保護、情報通信技術(ICT)とサイバーセキュリティー、コンプライアンス(法令順守)、内部通報制度、不祥事が起きた際の広報対応、災害時の業務継続、男女共同参画、仕事と生活の調和、セクハラやパワハラの防止、心の不調を抱える職員への対応などなど。
 担当している業務の専門知識の前に、このような共通知識が必要になりました。これは意外と気が付かれていません。
 ◆浅く広く知る必要
 これらの多くは、30年前にはなかった事柄です。あるいは、あったのですが、珍しい事例と片付けられたり、鷹揚(おうよう)にすませられたりしていました。
 しかし、今や珍しいことではなくなり、問題が起きたときに「いや~、初めての経験で」といった言い訳が許されなくなりました。
 間違った対応をすると、「傷口」をさらに広げてしまいます。起きてから勉強していては遅いのです。しかも、知っておくべき事柄は、次々と増えています。
 これらの項目それぞれに、専門書や研修はあります。ところが、これらの一覧、「管理職ならこれだけは覚えておこう」という教科書がないのです。
 すべての管理職が全項目を深く知ることは難しく、浅くてよいので、広く知っている必要があるのです。これは、管理職研修の盲点でした。
 ◆「政策の最先端」も
 私が勤務する市町村職員中央研修所(市町村アカデミー)は、市町村職員に専門的な研修を提供する機関です。行政実務研修、政策専門研修、管理職研修など、年間約90科目を実施しています。
 このような問題意識から、内閣官房や総務省などの専門部局の協力を得て内容を練り上げ、科目を作って実践することにしました。3月から募集を始め、5月に開講します。
 一つは、上に述べたような内容の「管理職の必須知識講座」です。もう一つは、「政策の最先端」です。
 デジタル化や感染症対策など、専門性の高い科目は既にあるのですが、それとは別に管理職や企画担当職員に最先端の政策課題とその動向を学んでもらいます。各項目を深掘りするのではなく、一覧表にしても分かる、「最先端政策の総合デパート」を目指しています。
 (時事通信社「コメントライナー」より)
 【筆者紹介】
 岡本 全勝(おかもと・まさかつ) 1955年奈良県明日香村生まれ。1978年東京大法学部卒、自治省入省。富山県総務部長、総務省交付税課長、総理大臣秘書官、自治大学校長、復興事務次官、福島復興再生総局事務局長、内閣官房参与などを歴任した。著書は「明るい公務員講座」「明るい公務員講座 管理職のオキテ」(時事通信社)、「省庁改革の現場から なぜ再編は進んだか」(ぎょうせい)など多数。

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