東京, 8月29日, /AJMEDIA/
日本が主導し、アフリカ諸国が参加する第8回アフリカ開発会議(TICAD8)が28日、閉幕した。中国が圧倒的な資金力を通じてアフリカ大陸で影響力を強める中、日本政府は量より質の「日本らしいアプローチ」(岸田文雄首相)で各国を引き付けようとした。しかし、首相が新型コロナウイルス感染でオンライン参加となり、アフリカ諸国の首脳級の参加は前回に比べて半数以下となるなど盛り上がりを欠いた印象は否めない。
「ナイロビでのTICADに安倍晋三元首相とともに外相として参加してから6年。オンライン参加となったが、アフリカ開発への思いは変わらない」。2日間の日程を通じ、首相は住まいの首相公邸から可能な限りオンラインで参加。TICADを3回主催した安倍氏の名前も出しながら、日本の「熱量」は不変だと訴えた。
日本はTICADを他国に先駆けて1993年に始めたアフリカ開発の老舗だ。一時は世界最大のアフリカ援助国だったが、中国が2000年、中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)をスタート。今や「日本の役割は中国の陰に隠れている」(英経済誌)のが実情だ。
資金力に劣る日本が巻き返しに向けて売り込んだのが支援の「質」。中国は経済圏構想「一帯一路」を掲げて世界各国に資金を投下しているが、途上国を借金漬けにする「債務のわな」で影響力を確保しているとの批判は絶えない。スリランカは7月、「破産」宣言に追い込まれた。
中国との違いを印象付けるため、首相は会議で「日本はアフリカと共に成長するパートナー」とアピール。債務健全化に向けた最大10億ドルの特別融資枠創設を約束した。中国の支援が人材育成につながらないとされることを念頭に「3年間で30万人の人材を育成する」とも表明した。
日本政府が中国と併せて意識したのが、ウクライナ侵攻を続けるロシアだ。ロシアも19年からロシア・アフリカ首脳会議を開催。アフリカ諸国には、足元の食料危機は日本や欧米による対ロ制裁が原因とするロシアの主張を信じ、ロシアに同情的な国が少なくない。
首相は会議で、食料危機は「ロシアのウクライナ侵略」が原因だと強調。27日の開会式では、直前に核拡散防止条約(NPT)再検討会議が決裂したことも急きょ取り上げ、「ロシアの反対により成果文書が採択されなかったことは極めて遺憾だ」と訴えた。
首相はオンライン参加のマイナスを補おうと、林芳正外相を首相特使に任命。協力して各国との「マラソン会談」に臨んだ。しかし、代表団トップを首脳級から格下げした国もあり、参加48カ国のうち、首脳級の出席は19年の横浜会議の42人の半分に満たない20人にとどまった。
アフリカがコロナ禍や食料危機に苦しむ中でのTICAD8は、日本が影響力を再構築するチャンスとみられていたが、機会を生かし切れたとは言い難い2日間となった。首相周辺は「オンラインは対面外交の威力にかなわない」と認めざるを得なかった。