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難航のCOP29 水面下で動く日本の“交渉官” 現場で何が?

東京, 11月22日, /AJMEDIA/

気候変動対策について話し合う国連の会議、COP29。

今週からは閣僚級の会合が開かれ、22日、予定された最終日を迎えましたが、最大の焦点「途上国への資金援助」をめぐり、議論が難航。

利害が絡み合い交渉が困難を極める現場で何が起きているのでしょうか。今回、私たちは、各国の思惑を探るべく水面下で動いてきた日本の“交渉官”に密着しました。

11月11日にCOP29が開幕する3日前。

大臣との最後の打ち合わせの場にカメラが入りました。

今回、環境省の10人ほどの交渉官をまとめる小沼信之さんです。

環境省 気候変動国際交渉室 小沼信之室長
「イギリス、英国を見て頂くと、ここは目標だけではなく実施も含めて非常によくやっている国のひとつでございます。こういった国もございますけれども、各国まだまだ不十分なところもありますので着実な実施というところは日本の強みなのかなと」

浅尾環境相
「アメリカ大統領選挙の話もいろいろ出てきておりますけれども、世界中が同じ方向に向かって活動していける形をとれればいいかなというふうに思います」

交渉官の任務は、各国の代表らとコミュニケーションを重ね、合意に向けた議論の下地を整えることです。

日本の国益を損なわずに、世界の温暖化対策を前に進めるという難しい役割が求められます。

環境省 気候変動国際交渉室 小沼信之室長
「トランプ氏に政権が代わることになっていろんな声があるけれども、どうやったら前に向いて前進できるかというところに主眼を置いていきたいなと思っております」

気候変動対策に消極的なアメリカのトランプ次期大統領への警戒感が強まる中で開幕した「COP29」。

世界中から集まった代表らと面会を重ねた小沼さんは、対策を前に進めることができるのか、懸念を強めていました。

11月16日
この日、小沼さんのもとにアメリカのグループから「話がしたい」と連絡がありました。訪れたのは、超党派の下院議員団です。

面会は30分あまり。

議員団は、トランプ政権に代わる今後の状況は見通せないとしましたが、引き続き日米で協力して気候変動問題に取り組む姿勢を示したといいます。

アメリカ民主党議員
「民主党も共和党も同じです.アメリカは引き続き気候変動対策のリーダーであり続ける必要があると認識しています」

小沼さんはどう感じたのか?

小沼信之室長
「(アメリカの議員団は)正直、なんと言うんでしょうか、あんまり踏み込んだのはなかったですね。最初に日本の代表団を訪れて来てくれて、それはありがたかったかなって思っています」

さらに、小沼さんたちには、日本の取り組みを世界にアピールする役割も託されていました。

この日、面会したのは、オーストラリアの気候変動委員会の議長です。

小沼信之室長
「私たちは、風力発電、特に浮体式洋上風力発電技術の利用を模索しています」

オーストラリア気候変動委員会議長
「オーストラリアも同じことを考えています。私たちには日本の技術が必要です」

COP29の会場で、環境省は最新技術を紹介するセミナーを主催。

日本の衛星を使って、宇宙から世界各地の温室効果ガスのデータを分析できるシステムを紹介し、途上国などを支援できると訴えました。

業務の合間には、留学中のアメリカから会場を訪れた大学生とも面会。

ところが、厳しい質問を投げかけられました。

大学生
「少なくともアメリカにいると若者世代からは、『何も合意しないし、開催するだけでもちろん電力消費もあるし、それにひも付くCO2の排出もある。本当に必要あるのか』みたいな話もある中でですね…」

小沼信之室長
「これだけ多くの人が集まって、その中でいろんな声があると思うんですよ。世界各国から200近い国が集まって気候変動対策という1つの目標に向かって議論をする場があるということ、これ自体はすごく貴重なことだなと正直感じています。この場をしっかりと大事にしながら、われわれ未来に向けてですね、しっかりした合意をやっぱり作っていかなければいけないなというふうな認識ではあります」

29回目を迎えるCOPですが、ことし世界の平均気温は観測史上、最も高くなることがほぼ確実になったという分析もあるなど、有効な手立てを打てていないという指摘もあります。

さらに、今回、最大の焦点となった「先進国が途上国の温暖化対策を支援するための資金」について議論が紛糾。

何らかの合意が得られるのか不安視されていました。

小沼信之室長
「いろいろと日程もよくずれるものですから」

記者
「本当に分刻みですね」

議論が平行線をたどる中、閣僚級の会合が2日後に迫ったこの日。

今回の交渉で、世界に先駆けて高い削減目標を発表したイギリスと、急きょ局長級の会談が設定されました。

途上国を支援する資金について、先進国が足並みをそろえることで一致。「目標額の引き上げ」を実現するため、中国などの新興国にも負担を求める方針を確認しました。

環境省 気候変動国際交渉室 小沼信之室長
「COPの交渉ってまあいつもそうなんですけど、やっぱ後半にどんどんもつれこんでいくんですよね。しっかり腹を割って話をしたうえで、一歩でも二歩でも前進させていこうと、そういったところをしっかり合意できれば」

そして閣僚級の会合は、途上国の温暖化対策を支援する資金について何らかの合意に至るのかが焦点となりました。

21日に示された成果文書の草案は、先進国寄りと途上国寄りの対照的な2つの選択肢が示され、意見の隔たりを併記した形でした。
いずれの選択肢でも、具体的な支援の金額は示されませんでした。
また、先進国側が主張してきた、途上国を含む各国が行う温室効果ガスの削減に向けた取り組みなどに関しても、踏み込んだ表現は見られず、双方から草案の内容が不十分だという不満が相次ぎました。

草案について、閣僚級の全体会合に出席した浅尾環境大臣。
途上国の気候変動対策を支援するための資金について、草案で示された「公的資金や民間資金を含む幅広い範囲で資金を集める」とした案に賛同し「多様な資金源や手段を活用する必要がある」と強調しました。

一方で、温室効果ガスの削減については「現在の内容はパリ協定で掲げた世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べ1.5度に抑える努力をするという目標とのギャップを埋めるには不十分だ」と批判しました。

こうした中、国連のグテーレス事務総長は「今こそ、各自が当初の立場から脱却し、妥協の可能性を見いだす時だ」と述べ、歩み寄りを呼びかけました。

会合は、22日が最終日の予定です。

しかし、現地時間の22日正午の時点で成果文書の新たな草案は示されず、会期の延長はやむをえないという見方が強まっています。

途上国の気候変動対策への支援額などをめぐって各国の意見に大きな隔たりがある中、何らかの合意にたどり着けるか重要な局面を迎えています。
各地で気候変動による被害が相次ぐ中、対策は待ったなしです。

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