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大橋、重圧との闘い 再出発のブダペスト―世界水泳

東京, 6月15日, /AJMEDIA/

 水泳の世界選手権は17日からブダペストで行われる。新型コロナウイルスの影響で、当初の福岡開催から変更された。東京五輪から約1年。再び世界に挑む競泳陣の2人のエースの今を追った。
 ◇思い出の地できっかけを
 大橋悠依(イトマン東進)の競技人生は、昨夏にがらっと変わった。五輪初代表で臨んだ東京大会で、個人メドレー2種目制覇。夏季五輪の日本女子としては、全競技を通じて初めてとなる2冠を達成した。日本競泳陣で金メダルを獲得したのは大橋だけだった。
 25歳で手にした五輪覇者の称号は想像以上に重かった。それをはっきりと自覚したのは3月の代表選考会。五輪後に最初に迎えた緊張感を伴うレースで、400メートル個人メドレーは3位に沈んだ。「変なレースをしたら、いろいろ言われると考えてしまった。自分自身との闘いに負けた」。もともと繊細な性格。周囲から仰ぎ見られる存在になったことを意識して体が硬くなり、本来の伸びやかな泳ぎを発揮できなかった。
 3度目となる世界選手権も、追われる立場で迎えることになる。舞台はブダペスト。200メートル個人メドレーで2分7秒91の日本新記録をマークし、2位に入った2017年大会と同じ会場だ。
 遅咲きながらも、努力を重ねてトップスイマーに成長した大橋。世界への扉を開いた思い入れのある地で再出発を図る。「すごく相性が良いプールだと思っている。わくわくしたり、楽しみだったりする気持ちの方が大きい」。2年後のパリ五輪を見据え、重圧との向き合い方をつかむ大会になるかもしれない。
 ◇瀬戸、学生と再スタート=パリへの第一歩に
 5月中旬。東海大のプールで、大学生とともに泳ぐ瀬戸大也(28)=TEAM DAIYA=の姿があった。早朝に続いて夜も行った練習は計5時間。「きょうは軽い方。遅いときは午後10時ぐらいまでやる」。表情には充実感があふれた。
 絶好調だった2年前に東京五輪の延期が決定。もやもやした思いを消化できず、さらに自身の女性問題が発覚して活動停止処分を受けた。強い風当たりの中、「それでも応援してくださる人たちに活躍を見てもらいたい」との一念で迎えた昨夏の五輪。本命の男子400メートル個人メドレーを含め、どのレースも表彰台に届かなかった。
 もうこんな苦い経験はしたくない。わらにもすがる思いで頼ったのが、東海大で指導する加藤健志氏。女子平泳ぎの五輪金メダリスト金藤理絵さんを育てたコーチだ。
 3月から本格的に指導を受け始めたばかり。師弟とも「基礎しかしておらず、強化にも入っていない」と口をそろえる。それでも平泳ぎの脚の動きが改善され、取り戻しつつあるシャープな体つきに手応えを感じている。
 2年後のパリ五輪をにらみ、今は泳ぎ込む時期だと思っている。今回の世界選手権は、現時点での実力を確かめる場となりそうだ。「今、自分が持っているものをしっかりと出したい」。気持ちを新たにしてスタート台に立つ。

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