東京, 1月30日, /AJMEDIA/
他国領域内からミサイルを撃たれる前に発射拠点や司令部を攻撃する「敵基地攻撃能力」の呼称に関し、変更を求める意見が与党内で広がっている。これを受け、政府は年末の国家安全保障戦略改定に向け、能力の保有を検討する過程で改称することも視野に入れる。今後、与党内の議論がさらに活発化しそうだ。
公明党の北側一雄中央幹事会長は27日の記者会見で、安保戦略改定に関連し「敵基地攻撃能力という言葉自体、良いと思っていない。違った表現をしてもらいたい」と政府に求めた。
理由について北側氏は、ミサイル技術の高度化により、移動式発射台や潜水艦からの発射が可能で、基地を破壊してもミサイル攻撃を防ぐことができないと指摘。同時に「攻撃」という表現が先制攻撃と誤解されかねないと説明した。
岸田文雄首相は敵基地攻撃能力に関し、「あらゆる選択肢を排除せず現実的に対応する」と保有検討を表明している。北側氏には、安保戦略改定で政府と足並みをそろえるため、呼称変更で党内の意見集約を進める環境を整えたいとの狙いもあるとみられる。
自民党内でも改称論が強まる。24日の衆院予算委員会では、宮沢博行国防部会長が敵基地攻撃能力という表現が適切か政府に質問。福田達夫総務会長は28日の会見で、2020年8月の党提言に「ミサイル阻止力」の保有が盛られたことに触れ、「一度議論したことも踏まえ、政府としては議論を進めてもらいたい」と語った。
野党にも同調する意見が出ており、日本維新の会はかねて党内で「領域内阻止能力」との表現を用いている。国民民主党も呼称変更を主張する。
岸信夫防衛相は「呼び名に固執するよりも、現実を見据えて対応していくことが大切ではないか」と改称に含みを持たせる。
もっとも、表現を改めることで、敵基地攻撃能力が目指す効果が変わるわけではない。憲法9条から導かれる「専守防衛」原則を逸脱するとの懸念が払拭(ふっしょく)できるかは不透明だ。
共産党の志位和夫委員長は20日の会見で「敵の基地を攻撃するだけでは終わらない。相手国をせん滅するような全面戦争にいかざるを得ない」と能力の保有そのものに反対する考えを示した。