EU、英に対抗警告 北アイルランド問題で対立再燃

東京, 6月15日, /AJMEDIA/

欧州連合(EU)は、英政府がEU離脱協定に盛り込まれた英領北アイルランドに関する取り決めの一部を一方的にほごにする法案を議会に提出したことを受け、対抗手段を講じると警告した。離脱をめぐる合意の履行を拒む英国と、「国際法違反」だと反発するEUの対立が再燃しつつある。
 EU欧州委員会のシェフチョビッチ副委員長は13日、「一方的振る舞いは相互信頼を傷つける」と英政府を非難。英国に対する法的措置を検討すると表明した。EU司法裁判所による制裁金支払い命令につながる動きだ。
 シェフチョビッチ氏はさらに、英EU間の無関税取引の継続を定めた自由貿易協定(FTA)について、離脱協定の履行が「前提条件」だと強調。法案によって履行されなければ、貿易面での対英報復もあり得ると示唆した。
 英政府がほごにしようとしている取り決めは、北アイルランドとEU加盟国であるアイルランドの間の「ハード・ボーダー(物理的な国境施設)」復活を避け、開かれた国境を維持するため、北アイルランドを実質的にEUの関税圏にとどめる内容。北アイルランドの英国への帰属をめぐる紛争の再発を防ぐ目的があり、離脱交渉では最大の焦点だった。
 ただ、2020年末の「完全離脱」後、英本土と北アイルランドの間で煩雑な通関手続きが必要となり、物流は混乱。法案はこの通関手続きの一部を一方的に省略するものだ。
 ジョンソン英首相は「比較的さまつな調整」と問題の矮小(わいしょう)化を図るが、法案が成立すれば、EUの規制にそぐわない商品が英本土から北アイルランドを経由して流入し、域内市場の根幹を揺るがしかねない。
 ロイター通信によると、ドイツのショルツ首相は記者団に「EUは結束して対応する。使える手段はそろっている」と語り、対抗姿勢を鮮明にした。英国内にも法案の悪影響を懸念する声があり、英政府に対する内外の圧力は今後高まりそうだ。

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