防衛費、年内決着は不透明 岸田首相指示、自民に財源先送り論

東京, 11月30日, /AJMEDIA/

 岸田文雄首相が28日に2027年度の防衛費と関連経費の合計を、国内総生産(GDP)比で2%にするための財源確保措置を年内に決めるよう指示したのを受け、政府・与党の議論が本格化する。ただ、自民党内には財源論議の先送りを求める意見が根強い。内閣支持率が低迷する中、指導力発揮をもくろむ首相の思惑通りに進むかは不透明だ。
 「年末に緊急的に整備すべき中期防衛力整備計画の規模、防衛力を安定的に維持するための財源確保措置を一体的に決定したい」。首相は29日の衆院予算委員会でこう強調し、調整を加速させる考えを示した。
 首相は28日、激しく動いた。衆院予算委散会後、根回しのため自民党の菅義偉前首相や麻生太郎副総裁らを訪問。公明党の山口那津男代表とも予算委の合間に電話で会談した。その後、浜田靖一防衛相と鈴木俊一財務相を官邸に呼んで、年内決定の指示を出した。
 閣僚のドミノ辞任で求心力低下がささやかれる中、防衛費増額の財源論議でリーダーシップをアピールする狙いとみられる。周辺は「(財源の)具体的な税目についても年末までに示す」と首相の意気込みを代弁する。
 もっとも、29日の自民党国防部会は「唐突だ。国民生活の実態を見ているのか」などと増税反対一色だった。背景には国民負担となる増税への根強い慎重論がある。来春には統一地方選も控えており、閣僚経験者は「国民への説明は難しい。増税で政権が吹っ飛んだことはいくらでもある」とけん制する。
 党内では、まずは国債発行で増額分を確保し、財源論議は時間をかけて行うべきだとの声が少なくない。世耕弘成参院幹事長は29日の記者会見で「首相が28日に述べたのは、まさに5年後の姿だ。(年末に)税目とか税率を決めるのは不可能だ」と言い切った。自民ベテランも「首相は指導力不足という批判に、『自分が決めた』という形にしたかったのだろう」と冷ややかだ。
 一方、財務省は財政規律の観点から、首相指示を「錦の御旗」にしようと動きを強める。鈴木氏は29日の閣議後会見で「防衛力を安定的に支える措置が不可欠だ」と強調。増税などによる安定財源の確保が必要との立場を重ねて示した。

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