防衛産業、基盤強化に本腰 相次ぐ撤退に危機感―政府

東京, 5月05日, /AJMEDIA/

 自衛隊の装備品を生産する防衛産業から企業の撤退が相次いでいる。背景には、低い利益率や調達数の減少があるが、これらの企業は有事に際しても装備品の維持・整備を担うため、撤退は日本の防衛力低下に直結する。政府は防衛産業を「防衛力の一部」と位置付け、対策に本腰を入れ始めた。
 この数年だけでも、防衛省から直接受注する主要企業の撤退が目立つ。2021年には三井E&S造船が艦艇建造をやめたほか、住友重機械工業は新型の機関銃事業から手を引いた。20年にもダイセルが航空機パイロットの緊急脱出装置の生産停止を決めた。
 撤退の理由の一つは、利益率の低さにある。現在、防衛省が発注する装備品は原価に7%程度の利益が上乗せされているが、10%を超えるとされる欧米諸国と比べると低い。納品後の利益率では、材料費の高騰や為替の影響により利益率が2~3%まで目減りしているケースもあるという。
 また、装備品の高度化・複雑化により調達単価が上がった一方、F35戦闘機などの高性能な米国製装備品の輸入が増え、国内からの調達数は減少。この結果、受注間隔が空く「お久しぶり生産」が増え、安定的な事業維持が難しくなっている。
 装備品を輸出できれば事業維持や価格抑制などの効果が期待できるが、高価で自衛隊のニーズに応じた装備品を買う国は少ない。これまでに完成装備品の輸出契約が実現したのは、フィリピンへのレーダー4基のみだ。
 こうした状況を打破すべく、防衛装備庁は企業の支援に乗り出している。防衛省は装備品の製造工程に3Dプリンターや人工知能(AI)などの先進技術を導入するための経費6億円や、中小企業のサイバーセキュリティーの脆弱(ぜいじゃく)性調査・設備導入などの費用8億円を22年度予算に盛り込んだ。
 さらに、鈴木敦夫装備庁長官の下に、装備品の利益率見直しや輸出に関するワーキンググループを設置し、具体策の検討を進めている。防衛省幹部は「以前は利益率が低くても『お国のため』と応じてくれたが、今では通用しなくなった」として、実効性のある対策が急務との認識を示した。

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