部品企業撤退、運用に支障も C2輸送機、代替先確保急ぐ―防衛装備庁

東京, 6月3日, /AJMEDIA/

 航空自衛隊C2輸送機のブレーキなどを生産する企業が今年2月に事業からの撤退を決めたことで、C2の運用面への影響が懸念されている。防衛装備庁は撤退企業の協力を得て、速やかに事業の引受先を探すとしている。背景には衰退への危機感も指摘される防衛産業の実態がある。
 油圧機器大手のカヤバは2月の取締役会で、航空機器事業からの撤退方針を決定した。同社は戦前、旧日本軍の零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の油圧緩衝脚などを製造していた歴史ある企業。ただ、利益率が低く調達数も少ない防衛産業の厳しい現状にさらされていた。
 さらに、新型コロナウイルス禍で民間航空機の運航が減り、製品の需要が減ったことも追い打ちをかけた。防衛省幹部は「経営的には合理的な判断だ」と撤退はやむを得ないと理解を示す。
 C2は2016年度に配備が始まった新しい輸送機で、川崎重工業が全体の生産を受注。空自の入間基地(埼玉県)と美保基地(鳥取県)に計15機が配備されている。昨年8月のアフガニスタンからの邦人退避や、今年3月以降のウクライナへの装備品供与に活用された。
 C2のような大型装備品の生産には、防衛省から直接受注する川崎重工業のような「プライム企業」に加え、関連部品を造る多くの企業が関わる。業界内には「戦車は千社」という言葉もあり、関係者は「部品一つが欠けるだけで装備品全体に影響する」と懸念する。
 装備品生産からの撤退は今回の例にとどまらない。プライム企業だけでも、この5年で三井E&S造船や住友重機械工業などが手を引いた。防衛省幹部は、カヤバの撤退について「氷山の一角だ」として、適正な利益水準の維持など抜本的対策が必要との認識を示した。

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