路上のガム、取り続け20年 460万個超、マナー向上願う―専門業者の57歳男性

東京, 1月29日, /AJMEDIA/

 繁華街や駅前などの路上には、吐き捨てられ、こびり付いたガムが点在している。国内唯一の専門業者「ガムクリーン・カンパニー」(東京都港区)の執行役員宮本晴一さん(57)は、20年以上にわたりガムを取り除いてきた。その数は460万個を超える。「歩く人が気持ちよく一歩を踏み出せる環境をつくりたい」。自治体や商店街などから依頼を受け、街の美化に励んでいる。
 1月下旬、東京・六本木の交差点で宮本さんは慣れた手つきで地面を磨いていた。英国製の専用機器を使い、黒ずんだ箇所に約130度の蒸気を当て、洗浄液を噴射。ふやけたガムはブラシで軽くこするだけで溶け出す。1個の処理に要する時間は約10秒で、1日に最大1300個ほど除去できるという。
 「一度きれいにした場所は吐き捨てが減る」と宮本さん。20年前と比べ、ガムの生産量は約4割に減少し、吐き捨てられる量も減ってきた。それでも長年蓄積した黒ずみが至る所で目に付く。
 長野市出身の宮本さんは、知人の出資者に誘われ、30代後半の頃にガムクリーン社に入社した。当時、正社員は宮本さんだけ。ガム清掃はボランティアが手作業でするのが主流で、予算を割こうという自治体は少なく、1年目の依頼は1件しかなかった。営業先で「ガムが付いていると転んでけがでもするのか」と聞かれたこともあり、「存在意義を否定された気持ちになった」と振り返る。
 地道にガム除去の必要性を説いて回り、関心を示す人は徐々に増えた。今では年間100件以上の依頼が舞い込むようになった。
 近年はアスファルトに代わり、ブロックやタイルで舗装された歩道が増えてきた。見栄えが良いだけに、汚れたまま放置されているのを見ると歯がゆい思いがする。「日本は箱物を作るのは得意だが、維持していくという意識は薄いのでは」
 新型コロナウイルスの流行でマスク着用が増え、路上のガムは格段に減った。「除去作業を見せることが啓発にもつながる」。マスクを外す生活が戻っても、吐き捨てが減ることを願っている。

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