英仏、独自の核抑止力を再評価 ロ中の脅威踏まえ―広島サミット

東京, 5月16日, /AJMEDIA/

【パリ、ロンドン時事】19日に開幕する先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、被爆地・広島から核軍縮の必要性を強調する象徴的機会になる。ただ、ロシアのウクライナ侵攻に伴う「核の脅し」やインド太平洋地域での中国の影響力拡大を受け、G7参加国のフランスと英国は独自の核抑止力を再評価しており、「核兵器のない世界」の理想は遠い。
 「抑止力がこれほど必要と思われたことはかつてない。ウクライナでの戦争により、われわれはその死活的重要性を改めて評価している」。マクロン仏大統領は1月、核兵器を「防衛の要」と位置付けた中期国防計画の骨格を発表する際、こう指摘した。
 仏国防省がまとめた国防計画法案は、2024~30年の国防費として計4130億ユーロ(約61兆円)を計上した。テロ対策などが焦点だった19~25年計画に比べ4割増となる。核抑止に関係する予算は年平均約12%で従来と変わらないが、国防費全体が膨らむため、投じる資金はおのずと増える。
 ルコルニュ国防相は空中発射型巡航ミサイルの改良などを通じて抑止力の性能・信頼性向上に努めると表明。「新たな脅威に立ち向かい、世界の大国というフランスの地位を維持する」と訴えた。
 英国も21年に公表した中長期計画「安保・国防・外交政策統合レビュー」で、核弾頭の保有数(推定225発)を20年代半ばまでに180発程度に減らすという軍縮目標を撤回。中国の台頭など変容する安全保障環境への対応を理由に、保有上限を260発に引き上げた。こうした方針転換は、ウクライナ侵攻を受けた今年3月の計画見直しでも大筋で踏襲された。
 少ない核戦力で十分な抑止効果を狙う「最小限抑止」戦略を採る英国は、核拡散防止条約(NPT)体制下の核保有5カ国中、核弾頭保有数を最少にとどめてきた。世界情勢が不安定化する中、英政府は「独立した核抑止力」を持つことが不可欠だと強調するが、市民団体からは「NPT体制の信頼性を一層弱める」(反核団体「核軍縮キャンペーン」)と批判する声が上がっている。

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