自民・菅氏、沈黙破り岸田首相批判 「政局にらみ始動」の臆測

東京, 1月12日, /AJMEDIA/

 自民党非主流派の中心的存在で無派閥の菅義偉前首相が、岸田文雄首相を「派閥政治を引きずっている」と批判した。2021年10月に退陣して以降、政権批判めいた言動は控えてきたが、内閣支持率の低迷にあえぐ首相の痛いところをにわかに突いた形だ。党内では「ポスト岸田」を巡る政局をにらんだ動きとの見方も出ている。
 「歴代の首相は派閥から出て、首相を務めたのではないか」。10日、訪問先のベトナム・ハノイで記者団の取材に応じた菅氏は、首相が慣例を破って岸田派会長にとどまり、同派例会に出席を重ねていることを疑問視。「政治家は派閥の意向を優先すべきではない。今は国民の声が政治に届きにくくなっている」と懸念を示した。
 同日発売の月刊誌「文芸春秋」でも派閥解消の持論を唱え、「岸田氏は昔に戻ったとまでは言わないが、派閥とうまく付き合いながら人事を決めている。国民の見る目は厳しくなる」と語った。
 菅氏は首相を辞任して以降、無役を貫き、政局絡みの発言は自重。周辺では菅氏中心の勉強会結成を模索する動きもあったが、菅氏はブレーキをかけてきた。新型コロナウイルス禍やウクライナ危機で国民生活が圧迫される中、政局にかまければ人心が離れかねないとの判断からのようだ。
 「慎重居士」(自民党ベテラン)で鳴らす菅氏が沈黙を破ったことで、党内には臆測が広がった。ある中堅議員は菅氏が「岸田降ろし」ののろしを上げたとの見方を示し、非主流派のベテランも「ここが勝負と踏んだのだろう。戦闘開始だ」と期待を込めた。
 もっとも、菅氏に近い閣僚経験者は「当たり前の発言。何か仕掛けようとしているわけではない」と冷静だ。「岸田氏が派閥の言いなりになっていることが念頭にある」と、人事などで主流派への配慮が目立つことへの苦言だと解説した。
 歴代の首相が出身派閥から距離を置いたのは、派閥主導の「金権政治」批判に端を発した政治改革の流れからだ。派閥領袖(りょうしゅう)が総裁の座を目指し、カネをばらまいて勢力を拡大したのも今は昔。それでも、岸田氏が首相就任後も折に触れ派閥会合に出席していることは、党内では奇異に映っていた。
 自民党の世耕弘成参院幹事長は11日の記者会見で「岸田氏が派閥色を露骨に出して仕事をしたことは全くない」と擁護。「派閥を離脱して首相を務めるのが安倍晋三元首相までの慣例だ。岸田氏がよく判断すればいい」と注文を付けた。

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