縦割り打破見通せず 「予算倍増」、掛け声倒れも―こども家庭庁

東京, 6月15日, /AJMEDIA/

 子ども政策の司令塔「こども家庭庁」が来年4月に発足する見通しとなった。これまで政府の各部署でばらばらに進めてきた施策を首相直属の組織で一元的に担い、いじめ、虐待、少子化などの諸問題の解決につなげるのが狙いだ。ただ、新組織が縦割り行政の弊害を解消できるかは定かでなく、予算確保の行方も不透明なままだ。
 「こども家庭庁は政府部内の総合調整を行う。厚生労働省が所管する社会保障政策にも必要に応じて関与していく」。岸田文雄首相は14日の参院内閣委員会で、同庁が勧告権などを武器に他省庁の「聖域」に切り込んでいくと強調した。
 従前の子ども政策は縦割りの典型だ。司令塔機能を取っても、貧困対策は内閣府、犯罪対策は内閣官房、虐待対策は厚労省に分散。少子化社会対策会議、子ども・若者育成支援推進本部、子ども貧困対策会議など関係閣僚会議も乱立し、企画・運営はばらばらだった。
 こども家庭庁はこれらの機能を一元化し、「子どもや現場の視点に立った強い司令塔機能を発揮する」(松野博一官房長官)ことを狙った組織だ。
 ただ、縦割りの象徴である幼稚園、保育所、認定こども園を統合する「幼保一元化」は今回も実現できなかった。3施設をそれぞれ所管する文部科学省、厚労省、内閣府の綱引きで、「保育所、こども園=こども家庭庁」「幼稚園=文科省」という新たな縦割りが生まれることになった。
 3施設の教育・保育基準はこども家庭庁と文科省が共同作成するため弊害は生じないと政府は主張する。しかし、国会審議でも不安は解消できておらず、立憲民主党の石川大我氏は14日の審議で「大人の都合に基づく組織。縄張り争いの結果だ」と批判した。
 十分な予算を確保できるかも見通せない。首相は国会審議で子ども関連予算の「倍増」を主張したが、7日にまとめた経済財政運営の基本指針「骨太の方針」には「強力に進めていく」としか記さなかった。防衛力について「5年以内に抜本的に強化」と年限を区切ったのとは対照的だ。
 日本維新の会の柴田巧氏は14日の審議で、少子化による日本消滅の危機を憂えた米実業家イーロン・マスク氏のツイートに触れながら、「彼に比べれば政府は本気度が薄い」と追及。首相は「来年の骨太の方針で倍増への道筋を明確に示したい」と語るだけだった。

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