政府と住民軽視、飛行優先 米軍事故再発リスク消えず―三沢F16タンク投棄

東京, 12月04日, /AJMEDIA/

米軍三沢基地(青森県三沢市)配備のF16戦闘機が緊急着陸前に燃料タンクを民家近くに投棄した問題。一歩間違えば大惨事につながりかねず、事態を重視した防衛省は在日米軍司令部(東京・横田基地)にF16の飛行停止を求めたが、米軍は2日に飛行を再開した。安全面の不安を軽視し運用を優先させた形で、地元の懸念が深まった。
 「事故原因を踏まえた安全対策の説明がないままに、米側が飛行を再開したことは極めて遺憾」。岸信夫防衛相は3日の記者会見で、飛行再開に不快感をにじませた。防衛省は1日にラップ在日米軍司令官あてに安全が確認されるまでの間、飛行を停止するよう要請していた。
 F16が11月30日に緊急着陸した青森空港(青森市)から三沢基地までは約60キロ。戦闘機なら数分で到達できる距離だけに、タンクを投棄し、青森空港に緊急着陸したことからも墜落の危険の切迫度がうかがえる。
 三沢基地のF16は2018年にも青森県内で、燃料タンクを投棄。誤って取り付けられた旧式の部品が破損し、エンジンが過熱したのが原因だった。今回の事故原因が特定され、再発防止策が徹底されない限り、事故が再発するリスクは消えない。
 防衛省によると、飛行中にエンジンの油圧が下がり続けたため、燃料を投棄したという。双発ならエンジン1基でも飛行できるが、F16は単発であることも影響した可能性がある。
 米軍が駐留する根拠となる日米安全保障条約は、日米の信頼関係と住民の基地負担で成り立っている。
 青森県の三村申吾知事は3日、防衛省を訪れ、岸防衛相に飛行再開の懸念を伝えた。知事は「これまで青森県は米軍三沢基地と一定の信頼関係の下、共に歩んできた歴史がある」とした上で、「近年は、大惨事につながりかねない事故や、地域の実情を無視した事案が立て続けに発生している」と指摘。「米軍に対する県民感情は悪化の一途をたどっている」と語気を強めた。
 日米地位協定上、米軍専用施設の管理権は米側が握り、日本政府は米軍機の運用に口を挟めず、日本が負担する在日米軍駐留経費(思いやり予算)は年間2000億円を超える。飛行再開の動きは、米軍の特権意識と安全対策への問題意識の希薄さの表れとも言える。

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