核軍縮の道「打ち砕く」 ウクライナ侵攻で危険な威嚇―米ロの緊張高まる

東京, 8月3日, /AJMEDIA/

世界の核兵器の約9割(計1万1800発)を保有する米ロ両国の核軍縮交渉は、「核なき世界」を掲げたオバマ米政権(2009年1月~17年1月)の半ばに停滞し、トランプ前政権下で後退していた。今年2月に起きたロシアのウクライナ侵攻は、「核軍縮が平和への現実的な道だという主張を完全に打ち砕いた」(ワシントン・ポスト紙)。
 ◇核管理を模索
 バイデン米大統領は21年6月、ジュネーブでロシアのプーチン大統領との初会談に臨んだ。約3時間の話し合いの中で、少ない成果の一つが「核管理の対話開始」だった。米ロはこれに先立ち、新戦略兵器削減条約(新START)の5年間延長で合意していた。
 新STARTはオバマ政権時代の11年2月に発効。米ロが共に戦略核弾頭の配備数を1550発以下にすることなどが定められている。
 核廃絶を目指すオバマ氏は新STARTの「後継体制」なども模索したが、ロシアは中距離核戦力(INF)全廃条約に違反して戦術核の配備を開始。トランプ前政権はINFから離脱し、核兵器の役割を再評価した。
 ◇戦術核使用の可能性
 バイデン氏は20年の大統領選への出馬で、核保有の目的を敵国からの核攻撃の抑止と核攻撃への報復に限るという「唯一目的化」を提唱した。プーチン氏との初会談で核軍縮に焦点を当てたのはこうした流れを踏まえたものだ。しかし米国が再び「核廃絶」へかじを切るという期待は、雲散霧消となる。
 「ロシアは世界で最も強力な核保有国の一つだ。わが国への直接攻撃は侵略者の壊滅と悲惨な結果につながることは疑いの余地がない」。プーチン氏はウクライナ侵攻時の演説で「核のサーベル」(バイデン氏)を鳴らした。
 プーチン氏が20年に承認した核兵器使用の条件には「国家存立を脅かす通常兵器による攻撃」が含まれる。ロシアの軍事専門家パベル・ルージン氏は、ロシアの求める停戦条件をウクライナ側に受け入れさせるために無人地域や船舶が航行していない海域で戦術核を使う可能性はある、との見解を示す。
 ◇制約なしの状態も
 ロシアが今回の軍事侵攻で核を「実践の兵器」として誇示したことは世界に衝撃を与えた。バイデン政権は3月に公表した核政策の指針「核態勢の見直し」(NPR)の概要で、核の「唯一目的化」の明記の見送りを余儀なくされた。
 米軍備管理協会のシャノン・ビュゲス上級研究員は取材に対し、「新STARTが4年足らずで失効すれば、米ロの核兵器は何の制約も受けず、(第1次戦略兵器制限交渉が妥結した)1972年以前のような状態になる。両国が今後緊張を高めていけば、際限ないエスカレーションにつながる」と警告している。

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