東大「メタバース工学部」開講式 オンライン講座など提供へ

東京, 9月24日, /AJMEDIA/

インターネット上の仮想空間=メタバースなどのデジタル技術を駆使して、中高生や社会人向けに、大学の講義をもとにしたオンライン講座などを提供する取り組みを東京大学の工学部が始めることになり、開講式がメタバース上で行われました。

東京大学工学部の取り組みは「メタバース工学部」と名付けられ、メタバースなどのデジタル技術を駆使して、中高生や社会人向けに大学の講義の内容をもとにしたオンライン講座などを提供することにしています。

23日は東京大学の安田講堂を再現したメタバース上の空間で開講式が行われ、受講者や招待客などがバーチャルの分身、アバターで参加しました。

このなかでは、受講者を代表して情報工学に関するプログラムを受講する高校2年生の林蔚欣さんが浴衣を着たアバターを使ってスピーチを行ったほか、イベントに招待された能楽師が専用の機器でアバターを操作して能の舞を披露しました。

東京大学工学部はメタバースの強みを生かして、年齢や性別、地域に関係なく参加できる新しい学びの場となることを目指していて、研究室を見学するツアーや女性研究者のロールモデルを紹介する企画なども用意し、工学分野に進む女子学生の増加などにもつなげたい考えです。

文部科学省によりますと、中高生や社会人向けに大学の講義と同様の内容をメタバースを活用ながら学べる機会を提供する取り組みは、全国的に珍しいということです。

林さんは「大学生と一緒に学べると思うととても刺激的です。技術系のスキルを学ぼうと思っても年齢制限でカットされることが多かったのですが、高校生でも気軽に参加できるので、この機会に頑張って技術を習得したい」と話していました。

専門家「メタバース利用することで新しい世界を知る機会に」
仮想空間=メタバースを教育分野に活用する動きが広がっていることについて、専門家は「メタバースを利用することでさまざまな人とフラットに交流することができ、新しい世界を知る機会になる」と話しています。

メタバースの教育への活用に取り組んでいる東京大学バーチャルリアリティ教育研究センターの雨宮智浩准教授はメタバースを活用する効果について、本人に代わってバーチャルの分身、アバターを活用して交流する点に注目しています。

雨宮准教授は「アバターを使うことで自分の偏見や先入観を排除してさまざまな人たちとフラットに交流できるのがメタバースの特徴だ。さまざまな人と広く交流しながら、性別、国籍、年齢、立場を超越して、もう一度新しい人間関係を作り直すとか、そこで新しい文化や社会を知る機会になる」と話しています。

さらに「例えば歴史を教えるときに織田信長のアバターを作って授業を行うなど、授業内容に合わせてアバターを変えるときっと楽しいだろうし、教育効果が期待できる」と述べ、授業を行う側もアバターを活用することで、効果的な授業が行えるとしています。

メタバースの教育分野への活用は新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、オンラインによる授業が普及したこともあり国内でも徐々に広まっていて、経験する機会が減った実験や実習など体験を伴う学びの機会を補完する役割も期待されています。

雨宮准教授は「VRゴーグルをかけたとき、自分が見ているものが現実世界と同じように枠のないものが見えるので、自分事として高い質の体験が得られ、教育だけでなく社会人に対しても訓練や研修で活用できる」と話していました。
メタバースで子どもたちがICT競うコンテストも
全国の子どもたちがICT=情報通信技術を使った学習の成果を競うコンテストが仮想空間=メタバース上で開かれ、分身の「アバター」を操作して交流を楽しみました。

このコンテストは、子供向けのICT教育の学習塾を経営する会社が、新型コロナウイルスの影響で失われていた子どもたちの交流の機会を取り戻そうとインターネット上の仮想空間、メタバースで初めて開きました。

メタバースの会場には、幼稚園児から高校生まで年齢ごとに7つの発表の部屋が設けられ、その中で、選考を通過した70人が、「私が考えるSDGs」というテーマで、課題解決のアイディアなどを発表する動画を見ることができます。

それぞれが学んできた表計算や画像加工などのソフトウエアを駆使して作ったイラストやグラフなどが生かされています。

この塾の埼玉県川口市の教室ではコンテストに参加した小学生たちが、パソコンでメタバース空間に入り、分身の「アバター」を操作して、メタバース上の渋谷の街なかを歩き回ったり、作品の発表の部屋に入り、動画を見て回ったりしていました。

そして、メタバース上の特設ステージでコンテストの結果発表が行われると、集まっていた6人のうち、▽森林の保全を呼びかけた2年生の女子児童と、▽再生可能エネルギーによる町づくりを呼びかけた3年生の男子児童の2人がグランプリに選ばれ、教室は歓声に包まれました。

メタバース内でも大勢の子どもたちのアバターが拍手を送り、お祝いの気持ちを表現していました。

グランプリを受賞した3年生の男子児童は「新型コロナで友達と気軽に会えませんが、メタバースなら会えるので、チャットとかをして楽しみたいと思いました」と話していました。

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