幕内復帰の朝乃山、課題克服途上の2連勝〔大相撲夏場所〕

東京, 5月16日, /AJMEDIA/

大相撲夏場所2日目(15日、東京・両国国技館)、東前頭14枚目の朝乃山が西14枚目の妙義龍を寄り切って初日から連勝した。左上手が遅い、遠いという課題の克服はまだ道半ばだが、それを補うすべも頭にたたき込んで、2年ぶりに立つ幕内の土俵で戦おうとしている。
◇悪い癖にも慌てず上手
 妙義龍の立ち合いは速くて低い。朝乃山は立った瞬間「もろ差しに来るのが見えた」という。
 許すまいと右の脇を固める一方で、左上手には届かない。「左で抱え込む悪い癖が出た」
 だが、右をねじ込んで差し手を返せたことで、相手の動きを封じることができた。寄りながら妙義龍が右へ回り込もうとしたところで上手にも手が届く。あとはがっちり引き付け、万全の体勢で向正面へ寄り切った。
 初日は千代翔馬を一蹴したが、左上手は取れないまま出足を利かせて寄り切った。取組後に「上手は前から指摘されているけど、まだ克服できていないので、課題ですね」と話している。
◇大関昇進後に突かれた弱点
 2019年夏場所で初優勝し、20年春場所後、大関に昇進した。だが、右差しが先で左上手が後になるため左で抱え込んで上体が起きる、上手を取っても位置が深くて引き付けが利かない-といった弱点を突かれるようになる。
 その典型が相四つの照ノ富士戦で、四つ身の形に大きな差があるため、歯が立たなかった。
 八角理事長(元横綱北勝海)も、次の横綱候補と期待していた当時から「悪い癖はなかなか直らない。直っても大事な一番になると出たりする」と懸念していた。
 そこへ21年夏場所中に発覚した不祥事で1年間の出場停止。番付上は同年九州場所以来の幕内だが、土俵に立つのはまる2年ぶりとなった。
◇「もっと丸く、下から」
 この間、コロナによる出稽古の禁止もあり、部屋の稽古だけではなかなか課題克服までいかなかっただろう。それでも十両までは順当に番付を戻せたが、これからはいよいよ幕内の実力者や新鋭が相手になる。
 春巡業では、今場所の再入幕が確実になっていたこともあって「幕内の人としっかり稽古してきた」という。コロナ対策の緩和で場所直前まで出稽古も認められ、本格的に課題と取り組む一方、良かった頃のように立ち合いの当たりと出足、上体を浮かさない姿勢を前面に出して弱点をカバーできるよう意識してきた。
 このため、2日ともまだ前傾姿勢がやや甘い点を反省し、「しっかり踏み込めたけどまだ上体が高いので、もっと丸くなって下から当たらないと上位では勝てない」と自戒する。
◇自分を見つめた目標設定
 場所前、幕内返り咲きに際して述べた目標は「今年中の三役復帰」だった。今場所を含めて年内にまだ4場所ある。大関経験者にしては、関係者もファンもじれったくなるほど控えめだが、2年前の自分も今の自分もしっかり見つめた上での目標設定だろうか。
 「自分の相撲は考えるより前に出ること」「あしたはあした。しっかり準備して戦うだけ」。大関復帰待望ムードに惑わされない落ち着きが、今は見て取れる。(時事通信社 若林哲治)

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