岸田首相に重荷、「負担増」議論 子育て・医療財源の検討本格化

東京, 9月8日, /AJMEDIA/

 深刻化する少子化や増大する高齢者医療費の財源をどう確保するのか。政府は7日の全世代型社会保障構築本部の会合で、国民の負担増に直結する議論を本格化させた。先の参院選を乗り切った岸田文雄首相は満を持して臨むはずだった。だが、新型コロナウイルスや物価高への対策に加え、安倍晋三元首相の国葬など新たな政治問題への対応で、政権の体力を消耗しているのが実情だ。
 席上、首相は子育て支援の充実、医療・介護制度改革、多様な働き方に対応できる社会保障制度の3テーマについて、給付と負担の在り方を年末に向けて議論するよう指示。特に想定を上回るスピードで進む少子化を「危機的な状況」と表現、子育て支援の強化を訴えた。
 首相はこれまでも、子育て予算の「倍増」を公言してきたが、財源をどうするかは明確にしていなかった。政府・与党内では「こども保険」を創設する案や、既存の社会保険料に上乗せする案が取り沙汰される。
 来年4月の「こども家庭庁」発足に合わせ、首相は現在42万円の出産育児一時金を大幅に増額する方針を表明済み。年末の2023年度予算編成では、この財源確保策も焦点となる。
 医療分野では「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者にさしかかった今年度以降、急増が見込まれる給付をどう賄うかも待ったなしの課題だ。政府内では、75歳以上で高収入の人を対象に保険料を引き上げる案が浮上している。
 財政を圧迫する案件が目白押しの状況を踏まえ、政府は6月に決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」で、25年度としてきた国・地方の基礎的財政収支を黒字化させる目標時期の明示を見送った。財源を手当てすることなく大盤振る舞いを続ければ、財政状況のさらなる悪化は必至だ。
 社会保障以外にも、首相が「相当な増額」を表明した防衛費や、脱炭素社会に向けた10年で20兆円規模の投資にかかる財源も手当てを迫られる。
 国民負担増は避けられそうになく、首相は議論の具体化を参院選後に先送りしてきた。与党が勝利したことで政権基盤を強化したはずだったが、直後に決断した国葬や、次々と明らかになる世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員の接点に対し、逆風は強まる一方だ。
 当面、選挙への影響を気にすることなく不人気な政策にも取り組める状況は「黄金の3年」とも言われたが、楽観論は消し飛んだ。政権が直面する難題や、待ち受ける重要課題の数々に、自民党中堅議員は「政権の体力がそがれているが大丈夫か。本番前に反復横跳びやうさぎ跳びをやらされているようなものだ」と不安を口にした。

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