岸田首相、対ロシア・中国で連携探る ASEAN、姿勢に温度差

東京, 4月30日, /AJMEDIA

岸田文雄首相の東南アジア・欧州5カ国歴訪が始まった。ロシアのウクライナ侵攻が続く中、前半は東南アジア諸国連合(ASEAN)の3カ国を巡り、「力による一方的な現状変更」への懸念を共有。覇権主義的な動きを強める中国をにらみ、インド太平洋地域への波及阻止を狙う。ただ、ロシアや中国に対する姿勢は各国で温度差も目立ち、日本が結束を主導するのは容易ではない。
 首相は29日、最初の訪問先となるインドネシアでジョコ大統領と会談。ウクライナや東・南シナ海の情勢、北朝鮮の動向に触れ、「多くの挑戦に直面している。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持、強化が一層重要になっている」と表明した。
 今回の歴訪について、首相周辺は「権威主義的な国家とどう向き合っていくか」がテーマと明かす。欧米はロシアの「侵略」を非難し、厳しい制裁措置を科す。一方、ASEANはベトナムなど歴史的にロシアと関係の深い国もあり、国連決議への対応はまちまち。対ロ制裁に踏み切ったのはシンガポールだけだ。
 日本はアジアで唯一の先進7カ国(G7)メンバーとして、「欧米からアジアとの架け橋役を期待されている」(外務省幹部)という。まずはウクライナ情勢で共通のメッセージを模索。さらに、中国を念頭に現状変更の試みに反対する立場で一致することも目指す。
 もっとも、ロシアや中国の影響力が東南アジアで根強いのも事実。別の外務省幹部は「首相が一度訪問しただけで、態度ががらっと変わるものでもない」と指摘、継続的な関与の必要性を強調する。
 ◇欧州、対中認識でずれ
 首相が後半で訪れる欧州は、対ロ制裁で足並みをそろえるものの、対中認識にはずれがある。
 英国は、米国やオーストラリアと3カ国の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を創設。軍事力を強化する中国を見据え、インド太平洋地域を重視する姿勢を鮮明にする。一方、イタリアは中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に協力するなど、経済面での結び付きが強い。
 ロシアのウクライナ侵攻で権威主義国家への懸念が強まる中、首相は6月にドイツ・エルマウで開かれるG7首脳会議(サミット)を念頭に、欧州とも厳しい対中認識を共有したい考え。政府関係者は「アジアの実情をしっかりと訴えていく」と強調した。

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