専門家、政府にいら立ち コロナ「第7波」に動き鈍く

東京, 8月4日, /AJMEDIA/

 新型コロナウイルスの流行「第7波」が衰えを見せない中、政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長ら専門家の一部がいら立ちを強めている。医療提供体制の逼迫(ひっぱく)にもかかわらず、政府の動きが鈍いとみているためだ。2日には専門家有志が政府にしびれを切らす形で緊急記者会見を開き、逼迫解消に向けた提言の発表に踏み切った。
 「ぜひ分科会で(提言を)議論させてほしかった。いろんな現場が悲鳴を上げるまで(政府が)なかなか動かないのが残念だ」。分科会メンバーである東大の武藤香織教授は2日、日本記者クラブで、分科会による正式な提言を阻んだのは政府だと批判した。
 分科会メンバーを中心に専門家18人が名前を連ねた提言は、医療が行き届かない現状を改善し、第7波を乗り切ることが主眼だ。「発熱外来」が忙殺されているため、一般診療所でも診察を可能とするよう提唱。医療機関や保健所の負担となっている感染者の「全数把握」の中止も事実上容認し、新たな調査手法の構築を急ぐよう求めた。
 政府が濃厚接触者の待機期間を最短3日間に短縮したことに関しては、「感染拡大リスクが高まる」と懸念を示し、7日間は可能な限り就業・就労前に検査で陰性を確認すべきだとくぎを刺した。場合によっては、政府が慎重姿勢を崩さない「行動制限」が必要になるとも指摘した。
 尾身氏らは1カ月以上前から提言に関する議論を重ね、政府に分科会で議題にするよう求めてきた。しかし、政府は首を縦に振らなかった。提言は第7波収束以降の将来像も含んでいるため、「第7波のさなかに急いで議論する必要はない」との考えからだ。
 外来診療の拡大などは事実上、感染症法上の「2類相当」の位置付けの一部見直しを意味する。提言が分科会で正式に議論されれば、「このタイミングで感染症法上の位置付けを変更することは考えていない」(岸田文雄首相)とする政府方針と食い違いが生じかねないことも懸念したとみられる。
 政府側が、濃厚接触者や行動制限に触れた提言内容を嫌ったとの見方もある。政府筋は「第7波は間もなく減少に転じる。これ以上の対策は必要ない」と語った。
 関係者によると、尾身氏らと政府の協議は1日夜に事実上決裂。その夜のうちに2日の会見がセットされた。尾身氏は会見で、発表が異例の形になった理由を問われ、「緊迫した状況で早急に発言するのが責任だ」と説明。「感染が収まってからやるのは今の状況にふさわしくない。採用するかしないかは政府の選択だ」と語った。
 政府関係者の一人は「専門家は強硬だ」と困惑を隠さない。ただ、専門家とのすきま風は政権として得策ではない。松野博一官房長官は3日の会見で「専門家の意見も聞きながら、さらなる対応について時機を逸することなく、適時適切に具体的な検討を進めていきたい」と語った。

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