対ロ、東南アジアと温度差 中国念頭に安保協力推進―岸田首相歴訪

東京, 5月03日, /AJMEDIA/

東南アジア・欧州5カ国を歴訪中の岸田文雄首相は2日、前半の日程を終えた。アジア唯一の先進7カ国(G7)メンバーとして、ロシアのウクライナ侵攻に結束して臨むよう各国に促したものの、厳しい制裁を科す米欧各国との温度差は変わらなかった。南シナ海で権益拡大を狙う中国に対しては名指しを避けつつ、安全保障分野を含む東南アジア諸国との連携強化を進めた。
 「力による一方的な現状変更は許されないとの基本的考え方で、共通認識を確認することができた」。首相は2日夜、東南アジア3カ国訪問の「成果」を記者団に強調し、「欧州訪問につなげていきたい」と語った。
 首相は東南アジア訪問で、ロシアの国際法違反に対する認識を可能な限り共有したい考えだった。国連総会の対ロ非難決議や国連人権理事会でのロシアの理事国資格停止決議をめぐり、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で棄権したり反対したりする国が相次いだためだ。
 日本政府内には「欧米に同調しない国があれだけ出ると『日本はアジアのリーダーなのに何をしていたのか』と見られる」と懸念する声もあった。だが、首相は同調を迫るより、一致できる点を際立たせることに腐心した。「力による一方的な現状変更」がアジアでも起きかねないとして、国際協調の重要性を説いて回った。
 ロシアと歴史的に関係の深いベトナムでの会談では、即時停戦と人道支援の必要性で一致。ファム・ミン・チン首相はウクライナへの人道支援に50万米ドルを拠出すると表明した。会談後、岸田首相は「前向きな一歩だ」と評価。「われわれの姿勢や思いに共感してくれた」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。
 日本としても、厳しい経済制裁でロシアを追い込もうとする米欧の価値観を押し付けるわけにいかないことは理解している。外務省幹部は「欧米より日本が話をした方が彼らに伝わる」と日本のASEAN外交の意義を強調しつつ、「日本に言われたから制裁に踏み切るというものでもない」との現実も指摘した。
 一方、中国の海洋進出への対応で、岸田首相はインドネシア海上保安機構への巡視船供与に向け調査を始めると表明。ジョコ大統領は「法の支配」に基づく地域の平和と安定を重視する姿勢を示した。
 ベトナムのチン首相との間でも、サイバー分野で同国軍の能力構築支援を含む安保協力を打ち出した。南シナ海での力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対することでも一致。日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」実現に一定の支持を取り付けた格好だ。

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