安全管理規定、実効性に課題 観光船の設備強化など検討―国交省

東京, 4月30日, /AJMEDIA

 沈没した観光船「KAZU I(カズワン)」は昨年5、6月に座礁などの事故を相次いで起こしており、国土交通省北海道運輸局は運航会社「知床遊覧船」を行政指導していたが、結果的に今回の事故を防げなかった。事業者側が作成する安全管理規定の実効性などが課題として浮上し、同省は小型船舶を使う旅客輸送を対象に、有識者らによる検討委員会を設置。制度見直しを議論する。
 旅客船の運航事業者は、海上運送法に基づき安全管理規定を作成し、国交相に届け出る義務がある。規定には、風速や波の高さなど出航可否の判断基準を記す必要があり、違反への罰則もある。
 知床遊覧船は「波が1メートル以上、風速8メートル以上」の場合に欠航するとしていた。同社社長は、消息を絶つ約4時間前に出航した時点では、1メートル以下だったと説明している。
 運航する海域の状況などで事情が異なるため、全事業者で一律の管理規定を設けることは難しい。明らかに実情を無視していれば同省が是正を指導するが、規定内容は業者の申告任せとなっているのが実情だ。
 同社は、無線アンテナの破損を把握しながらカズワンを出航させており、船内の衛星携帯電話も使えなかったとみられている。ただ小型船舶の安全管理規定では、事務所との連絡手段は、電波が通じる場所なら通常の携帯電話でも構わない。
 一般社団法人「水難学会」会長を務める長岡技術大学大学院の斉藤秀俊教授(水難救助論)は、万一に備えた通信手段確保の重要性を指摘し、「国際的に使われているデジタル化無線の装備を、小型船舶に義務付けることも検討すべきだ」と語った。

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