安倍氏、外交・安保で存在感 「森友・加計・桜」大きな禍根

東京, 9月27日, /AJMEDIA/

 通算8年8カ月の史上最長政権を築いた故安倍晋三元首相は、外交で強い存在感を放った。日米同盟を軸にインドや欧州を巻き込んで中国に対抗、安全保障では限定的な集団的自衛権の行使容認に踏み切った。一方、森友・加計両学園や「桜を見る会」の問題をめぐり「忖度(そんたく)政治・政権私物化」といった批判を招き、大きな禍根を残した。
 政治的遺産の一つが、2016年に提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想だ。「中国包囲網」構築を視野に、自由貿易や法の支配の重要性を訴えて米印、オーストラリアと連携。4カ国協力の枠組み「クアッド」へ発展した。米国はトランプ政権以降、この構想を自国の地域戦略に採用。日本の首相の外交政策を米国が取り入れるのは極めて異例だ。
 当時のトランプ大統領は「米国第一」を訴え、安全保障と経済の両面で日本への不満を隠さなかったが、安倍氏は何度もゴルフを共にして親密な関係を構築。先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)などでトランプ氏が欧州の首脳と対立した際には、調整役を担った。
 安全保障分野では抑止力の強化にも心血を注いだ。歴代内閣が憲法上「保有しているが行使できない」としてきた集団的自衛権の解釈を変更し、15年に安全保障法制を成立させた。国論を二分する事態に発展したが信念を貫いた。
 政権の最重要課題に掲げた北朝鮮による拉致問題、ロシアとの北方領土交渉は進展しなかった。特に北方領土問題では安倍氏が「2島先行返還」にかじを切ったことで、今後に影響する可能性がある。
 光が強い分、影も濃かった。妻の昭恵氏も絡んだ森友学園問題では、財務省幹部が公文書改ざんを指示し、職員が自殺。長年の友人が理事長を務める加計学園の獣医学部新設と合わせ、官僚が「安倍1強」に忖度する状況も浮き彫りとなった。
 首相主催の桜を見る会に関しては、安倍氏の後援会関係者が多数招かれていたことが判明。20年9月の首相退陣後には、現職中に100回を超える「虚偽答弁」があったとの指摘を受け、国会で謝罪した。

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