参院選へ外交手腕アピール 国会最終盤に異例の外遊―岸田首相

東京, 6月12日, /AJMEDIA/

岸田文雄首相は11日、シンガポールでの全日程をこなし、現地滞在が24時間に満たない弾丸外遊を終えた。与野党の駆け引きが激化する通常国会最終盤に首相が日本を離れたのは異例。22日公示が想定される参院選に向け、「外交の岸田」をアピールする狙いが透ける。
 「『平和のための岸田ビジョン』を進め、日本の役割を強化する」。首相は10日、アジア安全保障会議(通称シャングリラ会合)の基調講演で、「自由で開かれたインド太平洋」の実行計画を来春までに示すことなどを表明した。
 今回の外遊は「強行軍」だった。今国会会期末の15日を前に、内閣不信任決議案が衆院で否決されたのは出発前日の9日。帰国翌日の12日には地元・広島入りを予定する。週明けには参院決算委員会の質疑や政府提出法案の採決など、国会日程が目白押しだ。
 昨年6月には菅義偉前首相が先進7カ国首脳会議(G7サミット)出席のため会期末2日前まで英国を訪れた。ただ、近年は会期延長が見込まれない限り、首相が通常国会の会期末の近くに外遊することはなかった。
 そうした「慣例」を破って首相がシンガポールを訪れたのは、外相経験で培った外交手腕を印象付け、参院選へ得点を稼げるとの計算からだ。首相周辺は「地方を回るより、外交で存在感を示した方が有権者へのアピールになる」と語った。
 首相は今月下旬にドイツ、スペインで開かれるG7サミット、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議にも出席する方向で調整中だ。選挙期間と重なる見通しで、日本と直接の関わりがないNATOに関しては首相にためらいもあったようだが、自民党の高市早苗政調会長が「露出できる」と背中を押すと、にわかに意欲的になったという。
 NATO首脳会議に出れば、同じく出席に意欲を示す韓国の尹錫悦大統領と初会談するかも焦点となる。「どん底」状態の日韓関係改善に向けて実現を期待する声もあるが、ここでも参院選に向けた思惑が働く可能性がある。政府関係者の一人は「参院選前の会談はリスクが高い」と語る。

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