半導体、大競争時代に突入 米中対立、世界を分断―武器化する経済

東京, 1月2日, /AJMEDIA/

米中対立の激化を背景に、経済安全保障上の重要性が高まる半導体の開発や投資で、世界の主要国・地域がしのぎを削る大競争時代に突入した。米国は冷戦終結後では類を見ない厳しい輸出規制を中国に発動、日本や欧州にも同調を迫る。一方、中国は報復も辞さない構えであり、2023年はハイテク分野で米中の分断が一段と進みそうだ。
 「中国が台湾を力ずくで奪おうとした場合の代償についてシグナルを送る」。バイデン米大統領は22年5月の訪日時、先端半導体の生産で世界シェア9割を握る台湾の有事をにらみ、同盟国と共に対中制裁を科す可能性に初めて言及した。
 米国は同年10月、新たな対中輸出規制を発動。最新兵器に欠かせない人工知能(AI)やスーパーコンピューターに使われる先端半導体の開発を遅らせることが狙いだ。23年からの新議会で下院を主導する野党共和党は「脱中国依存」を加速させるよう主張。バイオテクノロジーや量子関連などにも規制の網が広がる見通しだ。
 半導体投資を促す補助金合戦は過熱の一途をたどる。米国は国内生産拡大に向け527億ドル(約7兆円)を投じるための新法を成立させ、半導体受託製造世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)の工場誘致に成功した。日本も6170億円の基金を活用。欧州連合(EU)は1345億ユーロ(約19兆円)、韓国は340兆ウォン(約35兆円)を拠出する計画を発表した。
 半導体を輸入に頼る中国には痛手となる。共産党の習近平総書記(国家主席)は22年秋の党大会で「核心的な技術の攻防戦に打ち勝つ」と演説し、半導体の自給率底上げを急ぐと強調。中国政府は25年に自給率を70%まで高める国家目標を掲げるが、調査会社ICインサイツによると、これまでに国産半導体の育成に10兆円超の補助金を投じたものの、21年の自給率は16.7%と、達成には程遠い状況だ。
 米中対立を描いた著書「CHIP WAR(半導体戦争)」で知られる米タフツ大のクリス・ミラー准教授は「少なくとも今後10年間、冷戦期以来となる大国間競争が続く」と指摘した。世界貿易機関(WTO)は米中分断で世界の経済成長は長期的に5%押し下げられると試算する。米中が経済力を「武器」に互いを威嚇する構図の中、日本を含む周辺国・地域の経済安保戦略が試されている。

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