制裁下、生活苦で不満拡大 核合意、再建不透明―イランのライシ大統領就任1年

東京, 8月4日, /AJMEDIA/

イランの反米保守強硬派ライシ大統領が就任して3日で1年。ライシ師は就任時、国民の生活改善を誓い、米国に制裁解除を要求した。だが国民の暮らしは向上せず、制裁解除の要となる核合意再建の行く末も不透明だ。生活苦からライシ政権への不満は膨らみ、各地に抗議活動が広がっている。
 ◇程遠い生活改善
 イランは2015年の核合意で核開発を制限する見返りに各国の制裁緩和を獲得したが、トランプ前米政権が18年に合意を離脱し制裁を発動。イラン経済は疲弊し、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけた。
 ライシ師は、選挙戦では「制裁や感染症でも揺るがない強固な経済をつくる」と公約。就任後も最高指導者ハメネイ師が提唱した国内の製造能力を強化する「抵抗経済」を掲げた。
 中国やロシア、トルコなど近隣諸国との経済外交も展開。中ロ主導の上海協力機構(SCO)への加盟に動き、制裁下での生き残りを模索した。
 しかし、国際通貨基金(IMF)によれば、22年の失業率は約10%と悪化の予想。政府の統計では、直近のインフレ率は54%に達する。複数の報道によると、ウクライナ危機と補助金廃止による食品の値上げなどへの抗議が各地で行われ、市民は「ライシに死を」と気勢を上げた。
 ◇2度目のヤマ場
 ライシ師は就任に際し、「抑圧的な制裁の解除を目指す」と訴えた。そのカギとなるのは核合意の再建交渉だ。
 欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)は7月26日、英紙への寄稿で当事国に合意草案を提示したと表明。イランのアブドラヒアン外相は今月1日、「米国が現実的、柔軟に行動すれば合意はすぐ近くだ」と語り、近く大詰めの協議が再開される可能性がある。
 だが、2月にも「最終段階」を迎えた交渉は、ウクライナに侵攻したロシアが注文を付けて中断。何度も交渉は停滞した上、イランは核開発を公然と続けており、妥結は楽観できない。
 日本エネルギー経済研究所中東研究センターの坂梨祥副センター長は、諸外国との関係強化を中心に、ライシ師がこの1年で「外交に自信を付けた」と指摘。一方、国内では「財政難でさらなる補助金削減の局面に差し掛かっている」として、「どう乗り越えるかが今後の焦点だ」と語った。

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