住民「ようやく戻れる」 生活不安で諦める人も―避難指示解除・福島県葛尾村

東京, 6月12日, /AJMEDIA/

 福島県葛尾村野行地区の特定復興再生拠点区域(復興拠点)で12日、避難指示が解除される。東京電力福島第1原発事故から11年3カ月。帰還を待ちわびた住民は「ようやく戻れる」と意気込みを見せる。一方、故郷への愛着は持ちつつも、生活への不安から居住を諦める人もいる。
 「やっぱりふるさとが好きなんだよな」と語るのは同県郡山市で避難生活を送る元村職員の半沢富二雄さん(69)。昨年11月、復興拠点内に自宅を建て直した。東日本大震災では、職員として避難者対応に奔走。その後も避難生活を続けながら村のためにできることを続けてきた。
 現在は県農業振興公社のコーディネーターとして、週4日村に通って営農支援に携わりながら、週末は準備宿泊に参加する。戻るのは大きな決断で、家族と協議も重ねたという。
 「寝泊まりすると、人もいないし不便過ぎることが分かる。これではみんな戻って来られない」と話す。野行地区は一体感がある地域だったと振り返り、「元職員としての使命感もある。まずは仲間をつくって巻き込んでいければ」と意気込んだ。
 一方、同県三春町で生活する元大工の大沢義伸さん(68)は帰還を諦めた。「除染しても放射能の値は事故前よりはるかに高い。基準値を下回ったから大丈夫と言われても難しい」と心情を吐露する。自分で建てた自宅も約3年前に取り壊した。「すぐ帰れたなら戻ったと思うが、今は体力も気力も続かない」と語る。妻のさゆりさん(67)は「病院や買い物できる場所も遠い。車が運転できないと孤立する」と訴える。
 ただ、2人とも故郷への愛情は今も変わらない。所有する農地の草取りなどのため村に通う予定だといい、大沢さんは「お茶が飲めるような小屋を建てたい」と話した。

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