世界遺産を見下ろしたいのに 遊覧気球が上がらないグローバルな事情

東京, 3月26日, /AJMEDIA/

 堺市が誇る世界文化遺産の大山古墳(伝仁徳天皇陵)。誰もが知る「鍵穴」の形を上空から眺められるようにと、堺市が気球遊覧を計画している。しかし、当初の開始予定から3年近くたったのに、気球が上がる気配はない。いったい何が重しになっているのか。

 大山古墳は全長486メートルで国内最大の古墳。クフ王のピラミッド(底辺約230メートル)や秦始皇帝陵(全長約350メートル)と並ぶ「世界3大墳墓」とも称される。

 そそり立つ形や巨大さがわかりやすいピラミッド、陵墓を守る兵馬俑(へいばよう)の壮観さがある始皇帝陵……。

 これらと大山古墳は様相が異なる。近くに行っても、森か小さな山にしか見えない。宮内庁が管理しているため、内部に立ち入ることもできない。

 1キロほど離れた堺市役所21階の展望ロビー(高さ約80メートル)から見ても、市街地に広がる森のようだ。

 市によると、鍵穴形の全景を見るには、間近からなら少なくとも100メートル程度の高さが必要という。

 全景を見る秘策として、気球から見下ろそう――。市議会の議事録を検索すると、古くは1993年に「巻き上げ式の気球」として構想に言及があった。

 具体的に進み始めたのは、2019年。世界文化遺産の登録が決まってからだ。

 大山古墳を含む百舌鳥(もず)・古市古墳群の世界遺産登録が決定した直後の7月8日。アゼルバイジャンであった国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会に出席して帰国した永藤英機市長と吉村洋文・大阪府知事が、関西空港で記者会見を開いた。

 永藤市長は6月の市長選で初当選を決めたばかり。1期目の施策として、そして記者会見の目玉として掲げたのが、気球遊覧事業だった。

 前任の竹山修身市長時代も、担当者が気球を観光活用する韓国を視察するなど研究は進めていた。ただ具体化が進んだのは、大山古墳西側に3階建ての展望施設を建設し、高さ8メートルの展望デッキから墳丘の稜線(りょうせん)を眺める、という計画だった。

 永藤市長は当選後、全事業の見直しに着手。展望施設の代わりに示した計画が、この気球遊覧だ。

 まずは1年限定の試行を決め、翌20年2月には最初の住民説明会を開催。「早ければ20年夏から気球遊覧をスタートさせる」と説明し、順調かに見えた。

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