ローカル鉄道存続へ正念場 生活の足影響、地方に危機感

東京, 8月7日, /AJMEDIA/

 採算が悪化したローカル鉄道の存廃論議が活発になってきた。国土交通省の有識者検討会が先月下旬、協議の対象となる路線の目安を策定。JR西日本、東日本は今年春以降、赤字路線の収支を相次ぎ公表した。新型コロナウイルス感染拡大の打撃を受けた鉄道各社は維持コストを軽減したい考えだが、生活の足に影響が出る沿線住民の反発が予想され、調整は難航しそうだ。
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 国交省の検討会は、バスへの転換を含む見直し協議入りの目安について、1キロ当たりの1日平均利用者数(輸送密度)が1000人未満の区間などと設定した。同省の別の小委員会は赤字路線の収支改善を促すため、鉄道会社と自治体が合意すれば国が認可する運賃の上限を超えた値上げを認める改革案を示した。岸田文雄首相はこれらの方針に理解を示し、「国もしかるべき責任を果たすように」と同省に指示している。
 背景には、人口減少や自動車普及に伴う利用者数の減少がある。鉄道は線路や車両の維持に多大なコストがかかるため旅客が少ない地域には向かないとされる。鉄道各社は、都市部などで得た利益により不採算路線の損失を補う「内部補助」でローカル鉄道を維持してきた。ただ、コロナ禍で都市部での旅客数も減少しており、内部補助による路線維持は難しくなりつつある。
 JR北海道、四国、九州は経営基盤が弱く、先行してローカル線の収支を公表。JR東海以外の収支が出そろった。JR西と東が発表した輸送密度2000人未満の区間の収支はすべて赤字で、赤字額の合計はJR西の17路線30区間が247億円(2017~19年度の平均)、JR東の35路線66区間が693億円(19年度)に達した。旅客需要が今後完全に戻る保証はなく、各社は「厳しい区間はいっそう厳しさを増す」(JR東の高岡崇執行役員)と訴える。
 鉄道各社は採算性が特に低い区間についてバス転換や自治体支援拡充などの対策を進めたい意向で、地方からは「強い危機感を持った」(山形県の吉村美栄子知事)と警戒する声が上がる。交通運輸について調査や政策提言などを行う運輸総合研究所の海谷厚志主席研究員は、各路線の必要性や再建可能性をデータに基づいて丁寧に検証すべきだと指摘した上で「企業、自治体、住民が『三方よし』と思える結論を得ることが重要だ」との考えを示している。

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