ルラ大統領が就任 分断した国民に和解訴え―コロナ対策で前政権追及・ブラジル

東京, 1月3日, /AJMEDIA/

ブラジルで1日、労働運動指導者出身で左派のルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領(77)が就任した。任期は4年。ルラ氏は2003年から10年まで2期8年間にわたり大統領を務めており、今回が通算3期目となる。昨年10月の大統領選決選投票で惜敗し、今も敗北を受け入れていない軍人出身の右派ボルソナロ前大統領は、退任を目前にした12月30日に米国へ出国。就任式出席を避けた。
 連邦議会で行われた就任演説で、ルラ氏は「(10月の)選挙の最大の勝者は民主主義だ」と強調。「われわれは、個人的かつイデオロギー的な意図に国を従属させようとした人々への報復は考えていない」と述べ、ボルソナロ政権を批判しながらも、選挙で真っ二つに分断された国民に和解を呼び掛けた。
 ルラ氏は、貧困対策や先住民対策に力を入れる考えも表明。「アマゾンの森林破壊ゼロが目標だ」と述べ、農業目的の森林伐採は必要ないと指摘した。治安対策では「ブラジルにこれ以上の武器はいらない。必要なのは平和と安全だ」と述べ、前政権が自衛権強化を目的に緩和した銃規制を再び強化する考えを示した。
 一方、新型コロナウイルス対策を巡っては「人口比でブラジルほど新型コロナによる死者が多い国は他にない。このことは(新型コロナ)否定論者や曖昧主義者、命に無神経な政府の犯罪的態度を物語っている」と強調。強力な対策に消極的だった前政権の責任を厳しく追及する意思を明らかにした。
 ルラ氏はボルソナロ政権が軽視してきた社会福祉や環境対策に力を入れる姿勢を示す一方、前政権が進めてきた行財政改革には後ろ向きだ。国営企業の民営化にストップをかけ、歳出上限撤廃を打ち出すなど、さらなる財政悪化を招きかねない政策は市場から不安視されている。前政権下で23まで減った省が37に増やされるなど、「大きな政府」復活を着々と進めている。
 
 ◇ルラ氏略歴
 ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ氏 45年10月27日、ブラジル北東部ペルナンブコ州ガラニュンス生まれ。職業訓練校に通いながらサンパウロ近郊で金属労働者として就職。地元金属労組の委員長を経て80年に左派の労働者党を創設し、86年、連邦下院議員に初当選した。02年、大統領に初当選し、06年に再選。在任中の汚職で有罪判決を受け、18年4月から1年7カ月間収監された。21年3月、最高裁が判決を無効と判断。22年10月、3度目の大統領当選。

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