ヒトの言語獲得 “のど“の構造が関係か 京大研究グループ

東京, 8月12日, /AJMEDIA/

ヒトが進化の過程で言語を操れるようになったのは、サルに比べてのどの構造が単純で、音を安定して出せるからだとする研究結果を、京都大学などの研究グループがまとめました。ヒトが言語を獲得した過程の解明につながる成果として注目されています。

京都大学ヒト行動進化研究センターの西村剛准教授らの研究グループは、ヒトが言語を獲得した過程を解明しようと、のどにある「声帯」に着目し、ヒトに近い43種類のサルののどの標本と比べました。

その結果、どのサルにも声帯の近くに、ヒトにはない「声帯膜」という組織があることを発見しました。

さらにチンパンジーなどで、のどの動きを観察する実験などを行った結果、声帯膜は声帯から出た音を増幅し、声を大きくする役割などを担う一方、声帯と互いに作用してしまい、声の大きさや高さを一定に保つのが難しいことが分かったということです。

声帯膜を持たないヒトは声帯を震わせて音を出し、唇や舌を使って高さなどを調整しているということで、研究グループでは、ヒトののどが音を安定して出せる単純な構造だったことが言語の獲得につながったと結論づけています。

西村准教授は「今後は脳が声帯をコントロールする仕組みなど、言語を獲得したメカニズムについても明らかにしていきたい」と話しています。

50年以上蓄積の標本やデータが研究を可能に
今回の研究を可能にしたのは、国内の動物園で50年以上にわたって蓄積されてきた標本やデータでした。

愛知県犬山市でニホンザルやチンパンジーなどさまざまな霊長類を飼育している動物園「モンキーセンター」は、昭和31年に京都大学の研究者の働きかけなどによって開園されました。

国内の霊長類の研究拠点になっているほか、併設する博物館では関連する標本やデータを保管してきました。

今回の研究には、▽50年以上かけて集められた43種類のサルののどの標本や、▽チンパンジーの声帯が震動する様子を観察したデータなどを活用したということです。

研究グループの京都大学ヒト行動進化研究センターの西村剛 准教授らは「今回の研究を可能にしたのはセンターが長い年月をかけて積み上げてきた資料やデータによるところが大きく、世界を見渡してもこうした研究ができる場所は他にない」と話していました。

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