ヒスパニックに「民主離れ」 共和の保守的価値観に共鳴―米中間選挙

東京, 8月13日, /AJMEDIA/

米中間選挙まで3カ月を切る中、選挙結果に大きな影響を及ぼすヒスパニック票の動向に異変が起きている。マイノリティー(少数派)に寛容な民主党支持の傾向が伝統的に強いとされてきたが、共和党に乗り換える動きが顕在化。記録的インフレへの対処でバイデン政権が苦戦し、逆風下にある民主党にとって「致命傷」になりかねない。
 ◇神、家族、国家
 6月、南部テキサス州で行われた連邦下院第34区の補欠選挙で共和党のマイラ・フローレス候補(36)が勝利し、メキシコ出身者初の女性下院議員となった。掲げたスローガンは「神、家族、国家」。厳格なキリスト教家庭で育ったフローレス氏は、共和党の保守的な宗教・家族観に共鳴し、人工妊娠中絶に反対する。「民主党はヒスパニックの価値観を無視している」と訴える。
 メキシコ国境に接する同選挙区は、人口の84%をヒスパニックが占める民主党の「牙城」だった。接戦ながら中間選挙の先行指標となり得る結果に、ヒスパニックの支持を当然視してきた民主党は衝撃を受けた。
 「家族や信仰を大事にし、政府の介入を嫌い、安全な街を求める。価値観が同じ共和党を支持するのは当然だ」。8月6日、同州ダラスでトランプ前大統領の演説を聞いたメキシコ系移民の彫刻家ジョージ・マルティネスさん(45)は話す。
 ◇新移民は「よそ者」
 保守系の米スペイン語ネットワーク「アメリカーノ・メディア」の運営に携わるグリフィン・ガルシアイダルゴさん(22)は、ヒスパニックの「民主離れ」について、バイデン政権の寛容な移民政策が原因と考える。「私たちの親世代の移民は、大変な努力をしてきた。(市民権を得るため)山のように書類をそろえ、試験も受けた。なのにバイデン(大統領)は不法移民を簡単に受け入れた」。既に地域に定着した移民にとって、新たな移民は雇用や住宅事情を圧迫する「よそ者」に映る。
 テキサス大オースティン校のデロン・ショー教授は、争点のずれを指摘する。「経済的に成功する『アメリカンドリーム』を求める彼らにとって、民主党が偏重しがちな中絶や性的少数者の権利といった社会正義は、それほど重要ではない」。低所得層の多いヒスパニック社会がインフレで苦しむ中、経済政策を重視する共和党が心をつかんだと分析する。
 ◇人口増支える「大票田」
 変化の兆候は2020年の大統領選でも見られた。世論調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、ヒスパニックの投票先はバイデン氏59%、トランプ氏38%。16年大統領選のクリントン元国務長官66%、トランプ氏28%と比べ、差が縮まった。今年7月のニューヨーク・タイムズ紙の世論調査では、ヒスパニックの政党支持は共和が38%で、民主の41%に迫っている。
 ヒスパニックは、20年まで10年間の米人口増の51%を占め、年々「票田」としての重みを増している。ガルシアイダルゴさんは訴える。「経済にしろ移民にしろ、私たちの声にも耳を傾けてほしい。それがヒスパニックの思いだ」。

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