バイデン米大統領の台湾防衛発言に賛否 「中国を挑発」「抑止強まる」

東京, 5月26日, /AJMEDIA/

バイデン米大統領が訪日中、台湾防衛の意思に言及したことが、米国内に波紋を広げている。バイデン氏は発言後「(台湾)政策に変更はない」と釈明したが、政界や専門家の間で「中国をいたずらに挑発する」「抑止を強める」と賛否の声が巻き起こっている。
 バイデン氏は23日、日米首脳会談後の共同記者会見で「台湾防衛のため軍事的に関与する意思はあるか」と問われ、「イエス。われわれの責務だ」と明言。台湾をめぐり歴代米政権が採用してきた「戦略的曖昧さ」の転換かと、内外に驚きが広がった。
 米国の曖昧戦略は、有事に介入するかどうか明確にしないことで中国の武力侵攻を抑止すると同時に、台湾の急進独立派の動きもけん制する意味がある。台湾防衛の意思を明確にすることは、中国の警戒心をあおる「重大な欠点がある」(米国家安全保障会議のキャンベル・インド太平洋調整官)というのが米当局の見解だ。
 バイデン氏の発言に、ポンペオ前国務長官はツイッターで「中国を混乱させれば攻撃を誘発する」と批判。米政治学者のイアン・ブレマー氏は「中国は外交姿勢を硬化させるだろう」と懸念を示す。
 一方、リチャード・ハース米外交評議会会長は「戦略の明確化は抑止力を高める」とバイデン氏を支持。「(中国本土と台湾は不可分とする)『一つの中国』政策を維持しつつ、アプローチを変える米国の新たな姿勢と受け止めるべきだ」と分析する。
 率直な性格のバイデン氏は、米政府の公式見解を踏み外した発言が多く「失言マシン」(ニューヨーク・タイムズ紙)とあだ名される。3月には訪問先のポーランドで、ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領について「権力の座に居座るべきではない」と述べ、数日後に事実上の発言撤回に追い込まれた。
 ただ、今回の台湾に関する発言は、単なる失言とは言いがたい。バイデン氏は過去にも台湾防衛の「責務」に言及し、そのたびに政府高官が火消しに追われた。バイデン氏は今回、「『一つの中国』政策を支持するが、それは中国が台湾に武力行使する権利があることを意味しない」とも説明している。
 シンクタンク「ジャーマン・マーシャル・ファンド」のアジアプログラム部長ボニー・グレイザー氏は、戦略をめぐる混乱はむしろ抑止力を弱めると指摘。「政権高官は台湾政策に関する包括的な演説を行うべきだ」と助言する。米国務省は24日、ブリンケン国務長官の新型コロナウイルス感染で延期していた「中国戦略」に関する演説を26日に行うと発表した。

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