バイデン氏、直前まで葛藤 原爆資料館訪問、米世論を懸念

東京, 5月20日, /AJMEDIA/

バイデン米大統領は19日、先進7カ国(G7)各国の首脳と共に広島の平和記念資料館(原爆資料館)を訪れ、犠牲者に祈りをささげた。原爆を投下した唯一の国のトップによる訪問。水面下では、日米の政府間で直前までぎりぎりの攻防があった。
ロシアけん制の狙いも 「被爆の実相」に触れる姿発信―G7首脳・広島サミット

 「大統領は長時間の視察はできない」。今年初め、日本側がG7首脳陣を資料館の細部まで案内する計画を伝えると、ホワイトハウス側はこう反対した。焼けただれた人々、焦土となった街―。大統領が長時間にわたり、生々しい被爆の現実と向き合うことへの拒否反応は強かった。
 米国では今も、日本への原爆投下を「戦争を終わらせるために必要だった」と肯定する見方が多い。ピュー・リサーチ・センターの2015年世論調査では、56%が投下は「正当化される」と回答した。「広島に行くだけで、『謝罪と同義』と批判的に受け止める国民もいる」(日米筋)。過去に、原爆投下を謝罪した大統領はいない。
 広島にはオバマ元大統領が現職として初めて16年に訪れたが、資料館の視察はわずか10分弱。2期目を終えようとしていたオバマ氏と違い、バイデン氏は24年大統領選で再選も目指している。サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は訪問に先立ち、大統領が謝罪する可能性は「ない」と、きっぱり予防線を張った。
 今回、調整に当たった日本政府高官によると、米側はロシアのプロパガンダに利用されることも恐れていた。ロシアは侵攻したウクライナで民間人を虐殺している。だが、被爆地・広島に注目が集まれば「米国こそ核で民間人を大量殺りくした」と矛先を向けられかねない。ホワイトハウスが首を縦に振らない中、日本側は「岸田文雄首相はいかに被爆の実像を伝えるかを重視している」「当日の朝まで調整する」(首相周辺)と粘った。
 結果的にバイデン氏は約40分間、資料館に滞在した。「2国間ではなく、歴史に敬意を払うG7首脳の一人としての訪問」(サリバン氏)という形式だった。首脳が一人また一人と到着する中、最後になったバイデン氏を岸田氏は雨の中、約50分待った。バイデン氏が資料館で何を見、何を感じたかは、まだ語られていない。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts