「遺族の思いに応えたい」 交通事故鑑定人の元警察官―10年に長男亡くす・宮城

東京, 5月4日, /AJMEDIA/

13年前、高校生だった長男を交通事故で亡くした宮城県警の元警察官、佐々木尋貴さん(59)=仙台市=は「自分と同じような経験をした遺族の思いに応えたい」と、11年前に交通事故の調査会社を設立し、突然家族を失った遺族に寄り添ってきた。現職時代に交通畑を歩んできた経験を生かし、被害者の最期の状況を遺族に伝えようと、真相究明のための鑑定に日々取り組んでいる。
 長男の一尋さん=当時(18)=は自転車で登校中だった2010年10月25日朝、仙台市内の交差点で軽乗用車にはねられた。意識は戻らず、事故の13日後、家族にみとられ、この世を去った。
 病院の集中治療室で妻と娘らは、一尋さんの片方の革靴が見つからないことを気にしていた。「靴が片方ないから何だ」。尋貴さんは、家族が革靴にこだわる理由が分からなかった。
 夏の甲子園を目指し、小学生の頃から泥だらけの靴で野球に没頭してきた一尋さん。無くなった革靴は高校の野球部を引退後、制服に似合うようにと本人が初めて選んだ1足だった。
 「主人の眼鏡が無いんです」「ネクタイピンを知りませんか」。交通警察官として多くの遺族から尋ねられてきた言葉の重さを、自身の家族から一尋さんの革靴の経緯を聞いて初めて気付いた。
 「遺族と向き合えていない」と感じた尋貴さんは11年、宮城県警を早期退職し、12年1月に「日本交通事故調査機構」(仙台市青葉区)を設立。死亡事故だけで、これまでに500件以上もの調査依頼を受けてきた。
 調査依頼は全国から寄せられ、現場に残されたタイヤ痕や車両の破損状況、事故当時の道路状況などを丁寧に調べ上げる。調査結果は遺族にも分かりやすいよう報告書にまとめ、裁判所や警察署で活用できるようにしている。尋貴さんは「遺族が少しでも対等な立場で意見できる手助けをしたい。今後も遺族や事故に対し、誠実に向き合い続けたい」と力を込める。

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