「年内決着」明言、岸田首相にリスク 防衛財源、増税へ自民の反対強く

東京, 12月4日, /AJMEDIA/

 防衛費大幅増額の財源を巡り、岸田文雄首相が年内に決着させる方針を明言し、退路を断った。だが、数兆円規模の歳出増を賄うため念頭にあると目される法人税や所得税といった基幹税の増税には世論の反対が根強い。自民党内には結論の先送り論があり、党内を説得できずに国債頼みが続けば、首相の求心力低下に拍車が掛かりかねない。
 ◇レガシー模索か
 「防衛力を中長期的に維持していくためにふさわしい財源を考えていかなければならない」。首相は2日の参院予算委員会でこう繰り返し、安定財源確保の必要性を強調した。
 首相は11月28日、鈴木俊一財務相と浜田靖一防衛相を首相官邸に呼び、防衛費と関連経費を合わせて2027年度に国内総生産(GDP)比2%とする方針を伝え、その財源の年内決着を指示した。増税の対象税目や時期の決定は来年度以降に先送りされるとの見方が政府内にも強かったが、政権幹部は「首相の強い意向があった」と明かす。
 増額規模に関する首相の意向が公になったのはこの時が初めて。それまでは必要な装備品などの積み上げの結果だとして「数字ありき」を否定してきたが、一転して自民党が主張する「2%」を受け入れた。
 「防衛力強化に道筋を付けた首相としてレガシー(政治的遺産)にしようとしている」。ある経済官庁幹部はこんな見方を示した。首相官邸関係者は「決断力を示すことは内閣支持率の回復につながる」と期待を込めて語る。
 ◇安倍派の「壁」
 ただ、GDP比2%は約11兆円に相当する。補正を含む21年度予算の防衛費6兆1160億円と比べ、5兆円程度の上乗せが必要だ。政府は特別会計の剰余金活用やムダの削減などに取り組む考えだが、基幹税の増税に踏み込まざるを得ないとの見方が支配的だ。
 首相指示を受け、自民党内で増税に待ったを掛けるのは安倍派の主要幹部が目立つ。世耕弘成参院幹事長は2日の記者会見で「(政府が企業に求める賃上げや国内投資の推進に)逆向きのメッセージになる」として法人税増税に否定的な考えを表明。萩生田光一政調会長は先月末、2年程度は「国債でつなぐ」案に言及した。
 安倍晋三元首相は生前、国債発行で賄うべきだとの見解を示していた。同氏亡き後、安倍派は会長空席のまま主要幹部が主導権を争っており、「安倍氏の遺志に沿おうとしているのでは」(閣僚経験者)との見方もある。同意の取り付けへ安倍氏一人と話をつければよかったかつての状況と異なる。
 「首相は増税が避けられないことを自らの言葉で国民に説明すべきだ。その覚悟が見えないと自民党内も説得できない」。ある財界関係者はこう語り、年内決着に向けた首相の指導力を不安視する。

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