「任期中改憲」五里霧中 岸田首相意欲も議論拡散

東京, 5月3日, /AJMEDIA/

 岸田文雄首相が掲げる来年9月末までの自民党総裁任期中の憲法改正が見通せない。衆参両院の憲法審査会の開催ペースは上がり、衆院憲法審は昨年暮れに緊急事態条項創設に関する論点整理を行った。ただ、各党の思惑が交錯して、議論は拡散気味だ。

 「総裁選に当たって任期中に憲法改正を実現したいと申し上げた。改憲に対する思いはいささかも変化していない」。首相は先月25日、憲法記念日を前に東京都内で開かれた自民党憲法改正実現本部の会合でこう強調した。

 国民投票法は国会が改憲を発議した後、60~180日の間に国民投票を行うと規定する。逆算すると来年9月末までに国民投票を目指す場合、事実上、来年の通常国会が発議のタイムリミット。自民党は「年内に改憲原案策定に向けた与野党協議を始めたい」(関係者)との考えだ。
 党内では一時、内閣支持率の低迷から「改憲に割くエネルギーは首相にない」(若手)との声が漏れたが、支持率は回復傾向にあり、閣僚経験者は「首相はやる気だ」と語る。
 衆院憲法審による昨年12月の論点整理では、自民、公明、日本維新の会、国民民主、衆院会派「有志の会」の4党1会派が緊急事態下の議員任期延長を「必要」とする立場を鮮明にした。公明党内からは「相当共通項がある。ぜひ合意形成を図りたい」(北側一雄副代表)との声も上がる。
 しかし、自民党は改憲原案づくりには踏み出さず、憲法9条改正による自衛隊明記の是非に議論の重点を置き始めている。9条改正を悲願とする保守派の意向が背景にあるとみられる。新藤義孝政調会長代行は先月27日の衆院憲法審で、「憲法9条の論点整理」と題した独自の文書を配り、「議論を詰めたい」と訴えた。
 これに対し、立民は共産党とともに論議の進展に抵抗を強める。立民の階猛氏は同日の衆院憲法審で、国民投票法を巡るテレビCM規制などの議論を優先すべきだと主張。「この課題を放置したまま改憲の中身の議論だけを続けることは(国民投票法が)予定するものではない」と強調した。
 こうした中、維新は自民、立民両党にいら立ちを募らせる。衆院憲法審は2023年度予算の衆院通過後の3月初めから毎週1回のペースで開催。これを立民議員が「サルのやること」とやゆすると、維新の馬場伸幸代表は反発し「共闘は凍結」と立民に通告した。
 馬場氏は自民党にも矛先を向け、先月30日のNHK番組では「(立民などへの)気配りは結構だが、ぼちぼち本気になって改憲項目の取りまとめを主導してほしい」と皮肉交じりに語った。
 維新は3月30日、国民、有志の会とともに議員任期延長に関する改憲原案をまとめた。国民の玉木雄一郎代表は同番組で「議員任期延長に絞り(議論を)あまり拡散させず、合意形成を目指すべきだ」と自民党の対応に不満を示した。

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