「バランス外交」脱し西側へ ロシアのウクライナ侵攻で戦略転換―NATO加盟へ一歩・フィンランド

東京, 5月14日, /AJMEDIA/

ロシアの隣国フィンランドが、北大西洋条約機構(NATO)加盟へと大きな一歩を踏み出した。ロシアのウクライナ侵攻を受けた動きで、実現すれば長年の軍事的中立からの大転換。西側の民主主義に共鳴しながらも、地政学的リスクからロシアヘの配慮を余儀なくされてきたフィンランドが「バランス外交」を脱し、米主導の軍事同盟に加わる方向へとかじを切る。
 フィンランドのニーニスト大統領とマリン首相は12日、声明でNATO加盟を「遅滞なく申請すべきだ」と宣言した。政府の特別委員会が15日に最終判断を下すが、申請方針はほぼ固まったとみられている。スウェーデンも同時期に申請の是非を決定する見込みで、来週早々に手続きに入るとする報道もある。
 ロシアと1300キロ以上に及ぶ国境を接するフィンランドは、1917年にロシア帝国から独立。第2次大戦中はソ連と2度にわたって戦い、国土の1割を奪われる苦杯をなめた。冷戦下の48年には、中立的地位を保証する代わりに、ソ連の敵対国に領土を使わせないことを約束する「友好協力相互援助条約」をソ連と結んだ。
 冷戦終結後も、欧州連合(EU)加盟など西側への接近を進める一方、ロシアに配慮してNATO非加盟を維持。ロシアの顔色をうかがい、結果的に選択肢や自決権を自ら制限する対外政策は、他国から「フィンランド化」と呼ばれた。国民はそうした状況に複雑な思いを抱きつつ、小国の生き残りに必要な措置として受け入れ続けた。
 しかし、今回のウクライナ侵攻がすべてを変えた。現実に迫るロシアの脅威は人々の不安をかき立て、国防の在り方をめぐる議論が活発化。集団防衛の枠組みに入ることの「安心感」と、中立維持の利点との選択肢を突き付けられた国民は、多くが前者を望んだ。議会も1カ月近くかけて審議を重ね、議員の大半が加盟を支持。懸念された申請から加盟までの移行期間の安全確保で、英国から防衛協力の確約を得るなど、申請に向けた道は着々と敷かれてきた。
 ニーニスト氏は11日の記者会見で「NATO加盟は(一方の利益が他方の損失となる)ゼロサムゲームでなく、誰に対抗するものでもない」と強調。一方で、ロシアのプーチン大統領を念頭に「あなたが(加盟へと向かわせる)原因をつくった。鏡を見るべきだ」とし、ロシアがウクライナで暴挙に走り、NATO拡大を誘発したと言い切った。

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