「トラスノミクス」に批判の嵐 トラス新政権、早くも痛手―英

東京, 9月30日, /AJMEDIA/

エリザベス英女王の死去を受けた服喪期間を終えて本格始動したトラス新政権が、目玉政策として発表した財政計画をめぐり批判の嵐にさらされている。「トラスノミクス」と称される富裕層の負担軽減を重視した経済対策に国民は猛反発し、市場も激しく動揺。就任から3週間超のトラス首相は、出だしからつまずいた形だ。
 計画は23日、クワーテング財務相が下院で発表した。過去半世紀で最大規模とされる約450億ポンド(約7兆円)の大型減税を柱とし、所得税の最高税率引き下げや法人増税撤回、銀行員のボーナス上限廃止などが盛り込まれた。減税に伴い、歳入確保のため国債発行を50%近く増額する方針だ。
 クワーテング氏は「(計画は)経済成長を促す」と強気だが、インフレと財政の一段の悪化に対する懸念から通貨ポンドは急落し、一時対ドルで史上最安値を付けた。その後も市場の動揺は収まらず、住宅ローンの新規融資を停止する銀行が続出するなど、影響は市民生活を直撃。国際通貨基金(IMF)は27日、計画を「推奨しない」とする異例の声明を出した。
 与党保守党の党首選で減税を公約に掲げたトラス氏は、規模や詳細な内容を明かしていなかった。首相就任から間もないうちに大胆な対策を打ち出し、高インフレ下の危機的状況からの脱却を図るもくろみだったが、市場の評価は厳しかった。
 光熱費高騰や記録的な物価高で生活苦にあえぐ国民の間でも、「とんでもない計画だ」という声が上がる。年収15万ポンド(約2300万円)以上の高額所得者に適用される最高税率を引き下げるなど「最も裕福な人々が対象」(シンクタンク解決基金)の政策について、メディアは「金持ちのための予算」とこき下ろす。
 混乱するトラス政権に対し、最大野党の労働党は「経済管理能力を完全に失った」(スターマー党首)と攻撃を強化している。最新の世論調査では、同党の支持率は保守党を17ポイント上回り、20年来で最大幅のリードを記録した。勢いづく労働党は、政治に「変化」(スターマー氏)が必要だと訴えている。

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