東京, 9月8日 /AJMEDIA/
日本製鉄が買収を計画している米鉄鋼大手USスチールの先行きに懸念が広がっている。欧米メディアによると、バイデン米大統領は買収を阻止する意向で、USスチールが経営再建策の練り直しを迫られる恐れがあるためだ。米国では、日鉄の買収で「地元はより繁栄し、雇用が増えると信じている」(サマーズ元財務長官)と、阻止の動きを批判する声も出ている。
USスチールは、1901年創業の老舗企業だが、海外からの安価な鉄鋼の流入やコスト高、施設の老朽化が進み、競争力が低下。近年はたびたび赤字に転落していた。同社は昨年夏ごろに身売りを決め、複数の候補から日鉄を選んだ。
ただ、全米鉄鋼労組(USW)が買収に反発。11月に大統領選を控え、労組票の取り込みを狙う民主党のハリス副大統領、共和党のトランプ前大統領がそろって反対姿勢を示し、破談の可能性が高まると、経営への懸念が再燃した。米株式市場では、USスチールの株価が1週間で約18%下落した。
USスチールは、買収が実現しなければ、高炉施設や雇用の維持が難しくなると指摘。東部ペンシルベニア州ピッツバーグの本社も保持できなくなる恐れがあると警告する。ブルームバーグ通信によると、市場では、USスチールが事業や資産の売却に追い込まれるとの観測も浮上している。
バイデン氏は、安全保障上の懸念を理由に買収計画を阻止するとみられているが、大統領選を前にUSWに配慮している側面が大きい。グティエレス元商務長官は米CNBCテレビに出演し、こうした動きについて「経済でも安保でもなく、政治的理由だ。USスチールも労働者も壊滅的な打撃を受ける」と厳しく批判している。